瑞穂の安らかな寝息が聞こえ始め、数分後。

俺はパチっと目を開いた。

ゆっくりと振り返ると、無防備な瑞穂の寝顔が視界いっぱいに写って胸が跳ねる。

「……こんな状況で寝れるかよ」

嘆きながらため息を吐く。


パーティーの日、瑞穂が帰ってきてほしいと言ってくれたことが嬉しかった。

本当は毎日瑞穂に会いたかったが、瑞穂にとっては煩わしいかもしれないし、家事の負担を増やすのも悪いと思ったから、あまりマンションには帰らないようにしていたのだ。

あのあと医師がホテルの部屋へ訪れて診察をし、瑞穂は緊張からくる一時的な体調不良だろうという診断を受けた。

しばらくホテルで休んでいたら彼女の体調は回復したが、心配だったから帰宅後は一緒にこのベッドで眠った。

それからは、当然のように俺もこの寝室で眠るようになった。

だが、やっぱり書斎で椅子によりかかったまま眠っているほうが良かったかもしれない。

瑞穂がすぐ隣で眠っていると思うとそわそわして落ち着かないのだ。

おかげで最近ずいぶんと寝不足になっている。

女性経験が全くないわけでもあるまいし、いい歳して情けないな。