あの夜、いつの間に寝室で眠っていたんだろうと思っていた。

そもそも斗真さんが帰ってきていないのに、先に勝手に寝室のベッドを使っていいものなのかも迷っていたし……

「もしかして、あの日ベッドに運んでくれたんですか?」

「ソファで眠っていたら体が痛くなるだろう」

当然のように答えた斗真さんに一瞬キュンと胸がときめいたけれど、すぐにそれは羞恥心に変わる。

私、あの日けっこう食べたよね?

斗真さんが帰ってくると思ったから張り切ってたくさん作って、ハンバーグもあっという間にたいらげたよね?

「すみません、重かったですよね」

頬を熱くしながら苦笑いをする。

「いや、軽すぎて心配になるくらいだ。もっと肉をつけたほうがいい」

「いえ、こう見えても脱ぐとけっこうすごいんですよ」

ぴたりと空気が止まる。

……え?私今なんて言った?

「ふっ」

斗真さんが吹き出し、口元に手を当ててくつくつと楽しげに笑いだす。

「なかなか大胆な発言だな」

私、なんて恥ずかしいことを!

自分の失言を激しく後悔しつつ、ちらりと上目で斗真さんの顔を盗み見る。

斗真さんは、最近一緒にいるときとても穏やかな表情をしてくれている気がする。

こんなふうに笑ってくれることも増えたし、夫婦らしくなってきたようで嬉しい。