『連れてこなきゃよかった』というのは、どうやら私が思ったニュアンスとは少し違ったようだ。

そのことにホッとするとともに、斗真さんにこんな顔をさせて申し訳ない気持ちになる。

「斗真さんは悪くないです。私の自己管理ができていなかっただけなので……ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

「迷惑なんかじゃない。やっぱり瑞穂をひとりにしておくのは心配だな。部屋のセキュリティは万全でも、瑞穂の体調までは守ってくれないし」

斗真さんは顎に手をあててぶつぶつとつぶやく。

さっきからなんだか大袈裟だなと思うけど、心配してくれる斗真さんの気持ちが嬉しい。

彼は私に目を向け、控えめに問いかける。

「瑞穂が嫌でなければ毎日マンションに帰るようにするが…どうだ?」

「そんな…嫌なわけっ」

思わず大きな声を上げながら飛び起きた。

それを見て、斗真さんは目を見開く。

「帰ってきてください。私、ご飯作って待ってますから。……私たちは夫婦なんですから」

私の懇願に斗真さんは少し黙ったあと、表情を緩めた。

こんなやさしい顔をする斗真さんを見るのはずいぶん久しぶりのような気がして、体温がまた上昇するのを感じた。

「わかった。そうする。だが、家事は無理しないでくれ。瑞穂も仕事をしてるんだから、一緒に外食に出かけたっていい」

予想もしていなかった反応と、『一緒に』という言葉が嬉しくて、私は「はいっ」と元気にうなづいた。