2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません

仕事が終わった17時すぎ、同じくシフトを終えた亜矢と一緒に店を出て、よく利用するカジュアルイタリアンのお店に入った。

「えっ離婚前提の結婚?」

「しーっ!」

突飛な声を上げた亜矢に、慌てて人差し指を立てる。

「あ、ごめんごめん」

亜矢は口元を手で覆い、キョロキョロと左右を確認する。

まだ夕食には少し早い時間だけど、店内はお客さんでいっぱいだ。

賑やかだから亜矢の声はそれに紛れて聞こえなかったと思うけど、こんなおかしな会話を誰かに拾われたくない。

亜矢は身を屈めて声を潜める。

「どういうことよ。瑞穂の好きな人って斗真さんって人だよね?その人と結婚するの?」

私はこくりとうなづく。

亜矢は「はあ」とため息混じりに声を漏らす。

「好きな人が結婚相手になったと思ったら、二年後に離婚予定?なんなのそれ」

「前に言ったでしょ?斗真さんには将来を誓い合った人がいるって」

「ああ、オープンキャンパスで見かけたって言ってた……」

亜矢が思い出したように宙を見上げ、私は届いたばかりのテーブルのレモネードに視線を落とす。