2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません

「おい、ノックくらいしろよ」

「したよ?返事がなかったから勝手に入ってきた」

幸斗は歩いてきて俺のデスクに手をつき、身を乗り出す。

「で、何が勝手なの?」

面白いネタを見つけたと言わんばかりにニヤニヤする幸斗に、深いため息をつく。

無意識に出ていた独り言を、よりによってこいつに聞かれてしまうとは。

「別になんでもない。それより、いつ帰ってきたんだ」

「昨日。ハードスケジュールだったけど、楽しかったよ」

「仕事で行ったのに、またどっかに寄って遊んできたんだろ」

「バレた?」

幸斗は舌を出しておどける。

幸斗は本宮ホールディングスのオフィスビルのすぐ隣に店舗を構える子会社で、インテリア用品のバイヤーをしている。

ここ一ヶ月ほど、買い付けのため海外に行っていたらしい。

昔から経営に全く関心のなかった幸斗は、ろくに会社のパーティーにも参加したことがなかった。

『俺に人の上に立つような仕事は向かない』と言って、本宮とは関係のない他社への就職も考えていたくらいだ。

両親が折れる形で子会社で働き始めたのだが、先見の明とセンスはずば抜けてあるようで、幸斗が買い付けてくるものは日本の若年層にウケて、口コミでどんどん広がった。

そんな幸斗の実績を見れば、両親も今のポジションで働き続けることを認めざるを得なかった。