リナリアは気になっていることを母に尋ねた。
「お母様、もしギアム様の勧誘に成功したとして、セリー商会に迷惑はかかりませんか?」
「迷惑どころか、優秀な人材が増えて大喜びすると思うわよ。まぁ、念のため、私からセリー商会には連絡しておくわ」
「ありがとうございます」
庭で長話をしていたせいで、日が暮れ辺りは薄暗くなってきてしまっている。母はリナリアの肩に優しく手をそえた。
「リナリア、食事にしましょう」
「はい、お母様」
母に相談して気分がスッキリしたせいか、その日の夕食は、いつもより美味しく感じた。
**
次の日の朝、リナリアは身支度を整えると、庭に出て赤い薔薇を探した。できるだけ綺麗な薔薇を選んで、トゲに注意しながらハサミを入れる。そして、薔薇のトゲがシオンを傷つけないように、ハサミでトゲを丁寧に切った。
「できた!」
一本だけだけど、愛情のこもったシオンへの贈り物ができた。
シオンに会うのが待ちどおしい。リナリアがしばらく庭で待っていると、騎士を引き連れた王家の馬車が見えた。
オルウェン伯爵邸の敷地内に入った馬車は、リナリアの前で止まる。馬車の御者が下りて来て、馬車の扉を開けた。とたんに、リナリアの視界いっぱいに赤色が広がる。
(赤い、薔薇?)
何が起こったのか分からないでいると、大きな薔薇の花束の向こう側からシオンの声が聞こえてきた。
「私の気持ち、受け取ってくれる?」
「赤い薔薇を私に?」
「そうだよ。薔薇は嫌い?」
シオンが同じ気持ちでいてくれたことが、とても嬉しい。
「いいえ、大好きです。嬉しい……」
そう返事をしたものの、薔薇の花束はリナリアの両手に収まりきらないくらい大きい。リナリアが、どう受け取ろうかと困っていると、シオンが騎士に邸宅の中まで運ぶように指示してくれた。
ようやく見えたシオンの顔は、輝いていてとても幸せそうだ。
(私もこんなふうに幸せそうな顔をしているのかな?)
リナリアは手に持っていた一本の薔薇をシオンに差し出した。
「シオン、私の気持ちも受け取ってくれますか?」
紫色の瞳が驚きで大きく見開いた。すぐにシオンの白い頬が赤く染まっていく。
「嬉しいよ、リナリア」
シオンはたった一本の薔薇をとても大切そうに受け取ってくれた。
「私は一本だけだけど、庭で一番綺麗な薔薇をシオンのために摘みました」
「うん……」
薔薇を顔に近づけ香りを楽しんだシオンは、「リナリアは、もちろん赤い薔薇の花言葉を知っているよね?」とイタズラっぽく微笑む。
「もちろんです」
シオンにエスコートされ、リナリアは馬車の中に入った。続いて乗り込んだシオンは、少しも迷うことなくリナリアの隣に座る。
「リナリア、私に赤い薔薇の花言葉を教えて?」
「愛しています、ですよね」
リナリアが少し自慢げに答えると、シオンに「もう一度」と言われてしまう。
「え? 『愛しています』ですよね? シオン」
急にシオンの顔が近づいてきたかと思うとリナリアの頬に唇が押し当てられた。
「!?」
「私も愛しているよ、リナリア」
そう言うシオンは、手に持っている薔薇が霞んでしまうほど綺麗だった。
「お母様、もしギアム様の勧誘に成功したとして、セリー商会に迷惑はかかりませんか?」
「迷惑どころか、優秀な人材が増えて大喜びすると思うわよ。まぁ、念のため、私からセリー商会には連絡しておくわ」
「ありがとうございます」
庭で長話をしていたせいで、日が暮れ辺りは薄暗くなってきてしまっている。母はリナリアの肩に優しく手をそえた。
「リナリア、食事にしましょう」
「はい、お母様」
母に相談して気分がスッキリしたせいか、その日の夕食は、いつもより美味しく感じた。
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次の日の朝、リナリアは身支度を整えると、庭に出て赤い薔薇を探した。できるだけ綺麗な薔薇を選んで、トゲに注意しながらハサミを入れる。そして、薔薇のトゲがシオンを傷つけないように、ハサミでトゲを丁寧に切った。
「できた!」
一本だけだけど、愛情のこもったシオンへの贈り物ができた。
シオンに会うのが待ちどおしい。リナリアがしばらく庭で待っていると、騎士を引き連れた王家の馬車が見えた。
オルウェン伯爵邸の敷地内に入った馬車は、リナリアの前で止まる。馬車の御者が下りて来て、馬車の扉を開けた。とたんに、リナリアの視界いっぱいに赤色が広がる。
(赤い、薔薇?)
何が起こったのか分からないでいると、大きな薔薇の花束の向こう側からシオンの声が聞こえてきた。
「私の気持ち、受け取ってくれる?」
「赤い薔薇を私に?」
「そうだよ。薔薇は嫌い?」
シオンが同じ気持ちでいてくれたことが、とても嬉しい。
「いいえ、大好きです。嬉しい……」
そう返事をしたものの、薔薇の花束はリナリアの両手に収まりきらないくらい大きい。リナリアが、どう受け取ろうかと困っていると、シオンが騎士に邸宅の中まで運ぶように指示してくれた。
ようやく見えたシオンの顔は、輝いていてとても幸せそうだ。
(私もこんなふうに幸せそうな顔をしているのかな?)
リナリアは手に持っていた一本の薔薇をシオンに差し出した。
「シオン、私の気持ちも受け取ってくれますか?」
紫色の瞳が驚きで大きく見開いた。すぐにシオンの白い頬が赤く染まっていく。
「嬉しいよ、リナリア」
シオンはたった一本の薔薇をとても大切そうに受け取ってくれた。
「私は一本だけだけど、庭で一番綺麗な薔薇をシオンのために摘みました」
「うん……」
薔薇を顔に近づけ香りを楽しんだシオンは、「リナリアは、もちろん赤い薔薇の花言葉を知っているよね?」とイタズラっぽく微笑む。
「もちろんです」
シオンにエスコートされ、リナリアは馬車の中に入った。続いて乗り込んだシオンは、少しも迷うことなくリナリアの隣に座る。
「リナリア、私に赤い薔薇の花言葉を教えて?」
「愛しています、ですよね」
リナリアが少し自慢げに答えると、シオンに「もう一度」と言われてしまう。
「え? 『愛しています』ですよね? シオン」
急にシオンの顔が近づいてきたかと思うとリナリアの頬に唇が押し当てられた。
「!?」
「私も愛しているよ、リナリア」
そう言うシオンは、手に持っている薔薇が霞んでしまうほど綺麗だった。