千夏は凪の服を着た姿でいつものカフェに行く勇気はなかったので、品川と一緒に近くのコンビニでお昼ごはんを買いにいった。

「先輩とコンビニなんて久しぶりっすね。こないだのオムライスといい最近縁がありますね。」

品川はどこか浮かれた様子。

「会わない時はひと月くらい顔を合わせないのにねー。」

コンビニの自動ドアを出ると偶然にも凪ちゃんが目の前にいた。

「…なんだよ、またこの男と一緒なのかよ…。」

凪がこぼした心の声はあまりに小さくて周りの雑音に消され、千夏は聞き取ることができなかった。もし聞こえてきたら、言葉遣いを注意していたに違いない。

(どっ…どうしよ。勝手に凪ちゃんの洋服を借りちゃってる…。今日だけは会うのが気まずくてコンビニに来たのにぃー!なんてツイてないのっ!)

なんて言葉から始めれば良いのかわからず、手は小さく降ってみるも声が出ないでいた。

「その服、似合ってますね。」

最初に言葉を発したのは凪だった。

「凪さんも思います?今日の先輩いつもと違ってかっこいい印象で素敵っすよね。」

カフェで千夏が『凪ちゃん』と呼んでいたのをしっかり記憶していたのか、品川も『凪さん』と名前で呼んでいた。

「普段、スカートが多いからじゃない?かな?」

(ちょっと誤魔化してみたけれど…絶対に凪ちゃん、自分の服だって気づいてるよね…。)

「たまには気分を変えたい時ってありますよねー。まぁ、予定外に男の家に泊まって、女兄弟の服を借りた為にいつもと雰囲気かわっちゃたりもしますけど。」

(絶対に勘づいてる。お願い!凪ちゃん!これ以上私を責めないで!!)

「あはは、先輩に限って後者はないですよ。男っ気ないって社内で有名なんで!」

品川は笑いながらいうので千夏は少しムッとする。

「千夏さんは十分可愛いですよ。私が男なら絶対に口説きますけどね。あ、コレからバイトなのでコレで失礼します。また、お店来てくださいね!」

そう言うと凪は2人から離れカフェのある方後歩き出した。