千夏は泉に抱きかかえられたまま、彼のマンションの部屋の前まで来た時、現実と夢の間を行ったり来たりしながらも薄らとまぶたに隙間ができ、その隙間から玄関ドアの横に描かれた表札が目に入った。
(廿楽だって…。)
「…泉くんって廿楽って言うの?」
珍しい苗字を目にした千夏は突然顔をあげて泉顔に自分の顔を近づけた。
「うわぁ、千夏さん急に動かないで。」
急に起き上がって態勢を変えられたので泉の足元がぐらつく。
「私のお気に入りのカフェに同じ名字で凪ちゃんってかわいい女の子がいるの。」
『廿楽』という文字を見て千夏は良くランチでいくカフェの店員の女の子を思い出した。2~3ヶ月くらい前にアルバイトで入った女の子なのだが背が高くハスキーボイスでカッコよい女の子だった。丁度、泉と同じくらいの背丈だろうか?となると泉は男性にしては背が低い方だと再認識する。小柄なのに複数人のナンパ男に1人で立ち向かった勇気は物凄いことなのだが、酔っ払いの千夏には彼の本当の強さを分からずヘラヘラと時を流してしまった。
凪という女の子はとても聞き上手な子で、千夏は会社の愚痴やプライベートで大好きな動画配信者であるNAGIの話を毎度聞いてもらっていた。凪ちゃんと話すようになったのも千夏の推しであるNAGIと同じ名前であることがきっかけだった。NAGIはトークや自作の曲を配信しており、千夏が職場で失敗して落ち込んでいた時に彼の曲を偶然耳にしてどっぷりとはまってしまった。また、顔出しを一切していないので、そのミステリアスなところも想像力豊かな千夏にとっては魅力の一つであった。配信がある翌日には必ずカフェに行って、凪ちゃんに配信の感想を熱く語るのが日常になっており、その姿をカフェのオーナーは『またNAGIの話か…。』と嫌な顔をせずに暖かく見守ってくれていた。
千夏の口から『凪ちゃん』という名前が出てきたので泉は一瞬固まったのだが、この一瞬の表情の変化に酔っ払いの千夏には気づくはずがなかった。
「ふーん…。ごめん、千夏さん、ちょっと捕まってて。。。」
泉は千夏をお姫様抱っこで抱きかかえたままズボンのポケットから鍵を出してドアを開けると、そのまま玄関脇にある寝室へ直行しベッドの上に千夏を下ろした。
「えっ?なんでベッド?」
初対面の男性の家に連れてこられ一瞬身構える。
「千夏さんが道端で寝ちゃったから俺がお持ち帰りしたの。ずっと抱っこしてたでしょ?意味わかる?」
両手で軽く頬を抑えて泉は言った。
「泉くんっていい人なんだね、私を外に放っておかないで泊めてくれるのね!」
酔っているから頭の中がお花畑なのか、それとも元々気が緩んだ性格なのか、彼を優しさの塊のように崇めている。
「ばーか、俺は据え膳は美味しくいただく人間だよ。申し訳ないけど、こんなチャンスを逃せるほど大人じゃないんで…。」
お気楽な性格の千夏に呆れながら返事をするが、最後はニヤリと口角を上げた。
「えっ?」
そういうと泉は千夏に深く長い口づけをし、少しずつ彼の体重が千夏の体にかさなる。インナーがめくれあがり大きな手が直接肌に触れると、ゆっくりと唇が離れた。
「……凪は、俺の妹?……だ。」
「そうなっ(の)?」
千夏は再び泉に唇をふさがれると今度は息ができないほど激しくキスをされた。彼のキスは千夏を一瞬で蕩けさせた。お酒のせいで体が熱いのか、彼のせいで熱いのか千夏にはもうわからない。
(そうか…凪ちゃんのお兄さんだから見たことがある気がしたのね…。よく見ると目とか唇の形が似てる…。)
夢うつつながらもどこか冷静でぼんやりそんなことを考えながらも泉のされるがままになってしまう。
「千夏さん…かわいい。」
彼に覆いかぶされながら耳元でNAGIそっくりなあの声で甘く囁かれると見も心も包まれとても心地よかった。
(廿楽だって…。)
「…泉くんって廿楽って言うの?」
珍しい苗字を目にした千夏は突然顔をあげて泉顔に自分の顔を近づけた。
「うわぁ、千夏さん急に動かないで。」
急に起き上がって態勢を変えられたので泉の足元がぐらつく。
「私のお気に入りのカフェに同じ名字で凪ちゃんってかわいい女の子がいるの。」
『廿楽』という文字を見て千夏は良くランチでいくカフェの店員の女の子を思い出した。2~3ヶ月くらい前にアルバイトで入った女の子なのだが背が高くハスキーボイスでカッコよい女の子だった。丁度、泉と同じくらいの背丈だろうか?となると泉は男性にしては背が低い方だと再認識する。小柄なのに複数人のナンパ男に1人で立ち向かった勇気は物凄いことなのだが、酔っ払いの千夏には彼の本当の強さを分からずヘラヘラと時を流してしまった。
凪という女の子はとても聞き上手な子で、千夏は会社の愚痴やプライベートで大好きな動画配信者であるNAGIの話を毎度聞いてもらっていた。凪ちゃんと話すようになったのも千夏の推しであるNAGIと同じ名前であることがきっかけだった。NAGIはトークや自作の曲を配信しており、千夏が職場で失敗して落ち込んでいた時に彼の曲を偶然耳にしてどっぷりとはまってしまった。また、顔出しを一切していないので、そのミステリアスなところも想像力豊かな千夏にとっては魅力の一つであった。配信がある翌日には必ずカフェに行って、凪ちゃんに配信の感想を熱く語るのが日常になっており、その姿をカフェのオーナーは『またNAGIの話か…。』と嫌な顔をせずに暖かく見守ってくれていた。
千夏の口から『凪ちゃん』という名前が出てきたので泉は一瞬固まったのだが、この一瞬の表情の変化に酔っ払いの千夏には気づくはずがなかった。
「ふーん…。ごめん、千夏さん、ちょっと捕まってて。。。」
泉は千夏をお姫様抱っこで抱きかかえたままズボンのポケットから鍵を出してドアを開けると、そのまま玄関脇にある寝室へ直行しベッドの上に千夏を下ろした。
「えっ?なんでベッド?」
初対面の男性の家に連れてこられ一瞬身構える。
「千夏さんが道端で寝ちゃったから俺がお持ち帰りしたの。ずっと抱っこしてたでしょ?意味わかる?」
両手で軽く頬を抑えて泉は言った。
「泉くんっていい人なんだね、私を外に放っておかないで泊めてくれるのね!」
酔っているから頭の中がお花畑なのか、それとも元々気が緩んだ性格なのか、彼を優しさの塊のように崇めている。
「ばーか、俺は据え膳は美味しくいただく人間だよ。申し訳ないけど、こんなチャンスを逃せるほど大人じゃないんで…。」
お気楽な性格の千夏に呆れながら返事をするが、最後はニヤリと口角を上げた。
「えっ?」
そういうと泉は千夏に深く長い口づけをし、少しずつ彼の体重が千夏の体にかさなる。インナーがめくれあがり大きな手が直接肌に触れると、ゆっくりと唇が離れた。
「……凪は、俺の妹?……だ。」
「そうなっ(の)?」
千夏は再び泉に唇をふさがれると今度は息ができないほど激しくキスをされた。彼のキスは千夏を一瞬で蕩けさせた。お酒のせいで体が熱いのか、彼のせいで熱いのか千夏にはもうわからない。
(そうか…凪ちゃんのお兄さんだから見たことがある気がしたのね…。よく見ると目とか唇の形が似てる…。)
夢うつつながらもどこか冷静でぼんやりそんなことを考えながらも泉のされるがままになってしまう。
「千夏さん…かわいい。」
彼に覆いかぶされながら耳元でNAGIそっくりなあの声で甘く囁かれると見も心も包まれとても心地よかった。



