響歌が舞達に橋本のことを報告してから1週間が過ぎた。
相変わらず家で課題に取り組んでいると、珍しく家の電話が鳴った。ほとんど使っていないのでディスプレイ設定はしていない。だからそこには番号が何も表示されていなかった。
なんだろう、セールスか何か、かな。
それでも無視せずに受話器を取る。もしかしたら…とも思って。
響歌の予想は当たっていた。電話してきたのは橋本だった。
「久し振りじゃない。元気にしてるの?」
「あぁ、でも、こっちは山の中だから、この季節は寒いのなんのって。地元も寒いところだと思っていたけど、まだ優しい方だったんだと実感中だ」
「そうなんだ、こっちは暖かいよ。エアコンだけで過ごせられるもの。逆に実家に帰った時は寒くて風邪をひいちゃったわ」
そんな他愛もない話をかなりの間していたように思う。
橋本は何か伝えたいことがあって電話してきたはずなのだ。それでもこちらから切り出すつもりは、響歌の方には更々無い。あっちから電話をかけてきたので電話料金もあちら持ちだ。このまま他愛もない話が続いても、まぁ、いいだろう。
「ふ~ん、やっぱり小長谷さんにもまだ心が動いていたんだ」
「そうそう、それに堀口さんにもクラクラっていったかな」
「それは残念だったわね。智恵美ちゃんには好きな人が他クラスにいたからねぇ」
橋本の相手をしながら、響歌は思った。
私…どうしてこの人の相手を忙しい中でしているのだろう。橋本君もこんな思い出話なんかをしていて楽しいのだろうか。
相槌を打つのも適当になっていた。そういえば今日も夕飯がまだだった。作るのも面倒臭いなぁ。でも、コンビニに行くのも同じくらい面倒だしなぁ。
そんなことを考えていると、橋本が妙なことを言い出した。
「そういえば2年の時、足達っていう子から手紙をもらったんだ」
………は?
響歌の意識が一気に橋本の方へと戻る。
足達って、もしかして『ラブラブ作戦』の?
まさかバレたんじゃないでしょうね!
「足達って、誰よ。名前は?同じ学年なの?」
「さぁ、名前まで書いてなかった。同じ学校だとは思うけど、学年は知らない」
1年下という設定はしていたはずだが、橋本には伝わっていなかったようだ。
「何よ、その曖昧なのは。で、何が書いてあったのよ」
響歌はできるだけさり気なく訊いていく。
「なんかオレのことが好きだというようなことが書いてあった」
「それだけ?つき合って下さいとかはなかったの?」
「それは書いてなかったな。でも、後でその友達っていう子から電話があった」
あぁ、あの一言返事のやつね。
「なんで友達が電話をしてくるのよ?」
「さぁ、なんかお前とオレの噂を気にしていたって、言っていたかな」
これは…確か、木原君には言わなかったところだわ。
「私との…ねぇ。でも、その噂って、1年の時のでしょ。私はその他に中葉君のまであったけどさ」
あぁ、あの時は本当に勘弁して欲しかった!
「あぁ、そうだったな、お前は大変そうだったよな」
「で、結局、その人とはどうなったのよ」
「卒業式の時、靴箱に手紙が入っていた。なんかオレのことは諦めたとか書いてあった」
「そりゃ、残念だったわね」
「あぁ、期待させておいて…」
橋本はブツブツ言っていたが、響歌は安堵していた。
卒業前、歩と亜希は1年前のことだし、もうこのまま有耶無耶に終わらせてもいいんじゃないかという気持ちになっていた。
それでもやっぱり念の為に手紙を出しておくことにしたけど、どうやらそれで正解だったみたい。
だけどまさかその結果報告を、私が本人の口から聞くとは思わなかったけど!
相変わらず家で課題に取り組んでいると、珍しく家の電話が鳴った。ほとんど使っていないのでディスプレイ設定はしていない。だからそこには番号が何も表示されていなかった。
なんだろう、セールスか何か、かな。
それでも無視せずに受話器を取る。もしかしたら…とも思って。
響歌の予想は当たっていた。電話してきたのは橋本だった。
「久し振りじゃない。元気にしてるの?」
「あぁ、でも、こっちは山の中だから、この季節は寒いのなんのって。地元も寒いところだと思っていたけど、まだ優しい方だったんだと実感中だ」
「そうなんだ、こっちは暖かいよ。エアコンだけで過ごせられるもの。逆に実家に帰った時は寒くて風邪をひいちゃったわ」
そんな他愛もない話をかなりの間していたように思う。
橋本は何か伝えたいことがあって電話してきたはずなのだ。それでもこちらから切り出すつもりは、響歌の方には更々無い。あっちから電話をかけてきたので電話料金もあちら持ちだ。このまま他愛もない話が続いても、まぁ、いいだろう。
「ふ~ん、やっぱり小長谷さんにもまだ心が動いていたんだ」
「そうそう、それに堀口さんにもクラクラっていったかな」
「それは残念だったわね。智恵美ちゃんには好きな人が他クラスにいたからねぇ」
橋本の相手をしながら、響歌は思った。
私…どうしてこの人の相手を忙しい中でしているのだろう。橋本君もこんな思い出話なんかをしていて楽しいのだろうか。
相槌を打つのも適当になっていた。そういえば今日も夕飯がまだだった。作るのも面倒臭いなぁ。でも、コンビニに行くのも同じくらい面倒だしなぁ。
そんなことを考えていると、橋本が妙なことを言い出した。
「そういえば2年の時、足達っていう子から手紙をもらったんだ」
………は?
響歌の意識が一気に橋本の方へと戻る。
足達って、もしかして『ラブラブ作戦』の?
まさかバレたんじゃないでしょうね!
「足達って、誰よ。名前は?同じ学年なの?」
「さぁ、名前まで書いてなかった。同じ学校だとは思うけど、学年は知らない」
1年下という設定はしていたはずだが、橋本には伝わっていなかったようだ。
「何よ、その曖昧なのは。で、何が書いてあったのよ」
響歌はできるだけさり気なく訊いていく。
「なんかオレのことが好きだというようなことが書いてあった」
「それだけ?つき合って下さいとかはなかったの?」
「それは書いてなかったな。でも、後でその友達っていう子から電話があった」
あぁ、あの一言返事のやつね。
「なんで友達が電話をしてくるのよ?」
「さぁ、なんかお前とオレの噂を気にしていたって、言っていたかな」
これは…確か、木原君には言わなかったところだわ。
「私との…ねぇ。でも、その噂って、1年の時のでしょ。私はその他に中葉君のまであったけどさ」
あぁ、あの時は本当に勘弁して欲しかった!
「あぁ、そうだったな、お前は大変そうだったよな」
「で、結局、その人とはどうなったのよ」
「卒業式の時、靴箱に手紙が入っていた。なんかオレのことは諦めたとか書いてあった」
「そりゃ、残念だったわね」
「あぁ、期待させておいて…」
橋本はブツブツ言っていたが、響歌は安堵していた。
卒業前、歩と亜希は1年前のことだし、もうこのまま有耶無耶に終わらせてもいいんじゃないかという気持ちになっていた。
それでもやっぱり念の為に手紙を出しておくことにしたけど、どうやらそれで正解だったみたい。
だけどまさかその結果報告を、私が本人の口から聞くとは思わなかったけど!

