「さむっ。」

 1月の教室は空気が冷たく張りつめている。雪の降る中登校する私たちを思って、担任の先生が早くから暖房をかけてくれてはいるが……。そんなことはお構いなしと、校舎のわずかな隙間を見つけて北風が入り込んでいるのだ。
 こんな日はこたつでゴロゴロといきたいところだけど、無慈悲にも冬休みは終わってしまった。今日から3学期。教室にはおなじみのクラスメイトの顔がちらほら。正月気分が抜けていないようで机の上で突っ伏している子や、冬休みの課題の最後の追い込みに忙しそうな子もいる。

「おはよー菜子。今日は彼氏くん、一緒じゃないんだ?」
「おはよ。残念だけど、そんな人いないもんで。」
「またまたぁ。」

 そう言ってコロコロ笑うのは、クラスでいつも一緒にいるあかり。私が来たから顔をあげてあいさつをしてくれた彼女の手元にも、数学の課題が開かれている。どうあがいたって朝の提出時刻までに間に合う量ではない。

「毎日毎日一緒に登下校してるのに彼氏じゃないなんて無理があるなあ。」
「朝は家が近いから一緒になりがちなだけだし、帰りも部活が同じだけだよ。あいつとはそんなんじゃな――」
「菜子ー!なんでおいていくんだよ!?」
「お、うわさをすればだね。おはよー光輝くん。」

 体に少しの雪をまとったまま教室に入ってきたのは、近所に住んでいる幼なじみ。マフラーやジャンパーを脱ぎながら不服そうな顔で私たちの席に近づいてくる。