リーズの指摘を受けて魔獣をよく観察すると、後ろ足をひどく怪我しているのが見える。
 その瞬間、魔獣の狼は力を失ったのか、そのまま変化していく。

「なっ!」

 何度も魔獣退治をしていたニコラですら初めて見る光景だった。
 人間の大きさ以上に巨大な狼の姿をした魔獣が、なんとうさぎほどの小さな動物のような姿に変わったのだ。

「小さく……なった……?」

 ニコラは警戒を続けながら、魔獣にゆっくりと近づいていく。
 その後ろからリーズもついていき、そしてニコラの脇からひょいと前に出ると、その魔獣を抱きかかえる。

「リーズっ!!」
「大丈夫、この子、もう気絶してる」

 優しくなでると、その魔獣からはひどい熱を感じ取れた。
 怪我が悪化して体調を崩しているのだとわかると、リーズはニコラに進言する。

「連れて帰りましょう」
「本気で言ってるのか?! こいつは魔獣だ。何をするかわからない。危険すぎる」
「この子は人間を襲おうとしたわけじゃないの。ただ、村の方に迷子になってしまった別の魔獣の子を探しに来ただけ」
「……?」

 ニコラにはリーズの言っている意味が理解できず、首をかしげた。