「ニコラ?」
「い、いや! なんでもない、それより何してるの?」

 するとリーズはちょっと照れたようにもじもじとしながら、唇をぎゅっと結んで言う。

「えっと、お昼に隣のお家にお邪魔してね、その、ニコラのお仕事のこと聞いてたんです」
「俺の?」
「ええ、そしたらなにか私にもできることないかなって思って、キャシーさんに料理を教えてもらったのだけれど……」
「けれど?」

 ニコラは言いにくそうにしているリーズの気持ちを悟って鍋の方へと確認に行く。
 そこにはいいにおい……ではなく、かなり焦げたようなにおいがして、ニコラは思わず顔をしかめる。
 頑張って作ろうとしたけれど作れなかったものは難しい料理ではなく、簡単なポトフだったがどういう料理かわからなかったリーズは水を入れるのを忘れて食材が焦げてしまった。
 しかし、なんとか努力しようとして、そして何より自分を思って挑戦してくれたことが嬉しく、ニコラはおたまを持ったままのリーズを抱きしめる。