「ニコラはね、私たちをいつも助けてくれる立派な騎士様だよ。森からの獣退治だけでなく、村の運営も手伝ってくれている」
「騎士とはどういったお仕事なのですか?」
「私たちも詳しくはわからないが、ニコラは王都からの使者でね、三年前にここにやってきたんだ。まだ若いのに一人で馬に乗ってやってきてね」

 当時を思い出すように紅茶を一口飲んで、語る。

「この辺境の地をまとめる長だけど、気取ってなくて優しくてね」
「ニコラの兄ちゃんは俺に読み書きも教えてくれるしな!」
「そうなのよ、なかなか私も農業と市場への運び込みとかで手が離せないこともあってね。そんなとき隣の子のフランソワーズとビルの面倒を見てくれるんだよ」
「そうですか……」

 騎士の本来の仕事は任地の統治であり、そこまで住民に密接にかかわることは少ないが、ニコラは違った。
 積極的に村の者の意見を聞き、取り入れて、助け助けられていた。
 そんな仕事でのニコラの様子を聞いたリーズの心にある気持ちが芽生えた。