「どういうことですか、父上!!」
「どうもこうもない、捨てた」
「あの辺境の地の森に女の子一人捨てるなんてどうかしてます!!」
「もし帰りたかったら歩いてでも帰って来るだろう」
「あそこからどれだけ距離があると思っているのですか!」
「うるさいっ! お前は黙ってわしの言うことを聞けばいいんだ!」
「……」

 リーズの兄であるブレスはあまりにも横暴に自分の妹を捨てた父に抗議していた。
 だが、運が悪いことに仕事でブレスが父の所業に気づいたのは、リーズが捨てられた二日後だった。
 そして所詮ただの伯爵令息にすぎないブレスはこの家の決定を覆すことなどできはしなかった。

「私がリーズを探しに行きます!」
「勝手にしろ」

 そう言ってブレスは辺境の地へと馬車を走らせていた。



◇◆◇