そんな凪くんと、たまたまクラスメイトだった私。
教室のまんなかでみんなに囲まれてキラキラと光を放つ凪くんと、そのにぎやかな様子を教室のすみっこから眺めるだけの私はあまりにも遠く。
まさか、恋をするなんて想像もできなかった。
むしろ、きっとひとことも話さないまま卒業するんだろうなって思っていた。
「────えー、公正なくじ引きの結果、主役のシンデレラは上村に、王子は日下に演じてもらうことに……」
秋の学園祭で、私たちのクラスは定番の『シンデレラ』の劇をすることになった。
配役はくじ引きで決めたのだけれど、起こったのは大ブーイング。
「なんで藤吉くんが王子様じゃないの? おかしくない?」
「普通に王子様は藤吉くんしか考えられないよねーっ!」
「藤吉くんを差し置いて、誰が王子様役なんてできるのよ」
主に女の子を中心に「王子様にふさわしいのは藤吉くんしかいない」とくじの結果に、猛抗議。実行委員長の男の子も「いや……」と言葉を濁してたじろぐばかり。
たしかに、凪くんは王子様みたいな男の子、だけど。
よりによってシンデレラ役なんかを引き当ててしまった私は、ぼーっとしながら、何気なく凪くんに視線を移した。
凪くんは「藤吉くんこそ王子様だ」と盛り上がる教室の空気に取り残されたように、困った表情を浮かべていてハッと息をのむ。
そうだよ、凪くんだってふつうの男の子だ。
私がシンデレラ役を引いて憂鬱な気持ちになるのと同じで、凪くんだって王子様をやりたがっているわけじゃない。
「ええと、じゃあ、王子役は藤吉に代わ────」
「ま、待って!」
とつぜん、手を挙げて立ち上がった私に教室中の視線が集まる。



