そういえば。
「……藤吉くんも、金の夫婦の卵に選ばれたくて、この学校に来たの?」
「あー……、まあ」
とつぜん探るような真似をはじめた私に、凪くんは小さく頷いた。
「元々、セブンオーシャンが作るゲームアプリが好きで、いつか働くならここがいいってずっと思ってた。社長になりたい……とまではいかないけど、ちょっとでも繋がりが持てたら後々有利だろーなって。あとは、単純にあのセブンオーシャンが運営する学校ってどんなんだろって興味本位」
知らなかった。
はじめて聞いた。
ゲームが好きだってことも、いつかセブンオーシャンで働きたいって夢も。
まる1年も付き合っていたのに、私、凪くんのこと、なんにも知らない……。
きゅ、とお箸を握りしめる。
「それが、理由の半分」
「はんぶん?」
「そう。もう半分は────……」
なぜか、凪くんが私をじっと見つめる。
凪くんの吸いこまれそうな深い色の瞳のどまんなかに、私ひとりがぽつんと映っていて、たまらない気持ちになった。
そっと視線をそらす。
すると、凪くんは言いかけた言葉を飲みこんで。
「上村は?」



