ꗯ.*
⑅
「……」
「……」
黙々とひたすらお箸を口に運ぶ。
食堂、凪くんと向かい合わせ。
さすが世界中で注目されているセブンオーシャンの学校、食堂のごはんもとびきりおいしい────はずなんだけど、味がしない。
ううん、味わう余裕が、ないの。
一緒に学食に来たはいいものの、凪くんと私の間に、会話はひとつもない。
ひたすら、緊張ばかりがつのっていく。
他のテーブルでは、私たちと同じ新入生が集まってキャッキャと盛り上がっていて……しんと静まりかえっている凪くんと私はなんだかぽつんと浮いている。
「てかさー、入学式ではじめて生の七海社長見て、そこでやっと実感したわ。うわ、やっぱマジなんだって」
「入試受けときながら言うのもだけど、実感わかないよね。だって、金の夫婦の卵に選ばれたら、あのセブンオーシャンの社長って!」
「そりゃー “一攫千金校” って呼ばれるよな」
「卒業と同時に入籍ってのも信じらんないよ」
「でも、正直絶対選ばれたい〜! 選ばれたすぎる〜!」
「一生勝ち組確だもん。選ばれたいに決まってるよね」
「つうか、ほとんどの生徒がソレ目当てっしょ」
にぎやかな周りの声は、聞こうとしなくても自然と耳に入ってくる。
話題の中心はやっぱり、学園と金の夫婦の卵のこと。



