「な、凪くん?」
戸惑う私に凪くんは、気まずそうに目をそらした。それから言い訳っぽく唇をとがらせて。
「そりゃあ、りりとふたりきりになったら、普通にこうなるから」
「こうなる、って」
「心拍数えぐいことになる」
素直にさらりと告げられて、今度は私のスマートウォッチが「ピコーン!」と派手に音を立てた。
もうとうに脱出条件はそろっているのになかなか出てこない私たちのことを、係の人は不思議に思っているに違いない。
だけど、もう少しだけ。
「凪くん、好きです」
ずっと嘘をつき続けていた恋心に素直になった瞬間、涙がぼろっと溢れてきた。
「ずっと、好きだった……っ。好きじゃなくなった、なんて、嘘だったの。凪くんのことばかり考えて、忘れられなくて……この学校に来たのも、凪くんのことを忘れたかったからで」
なのに、その運命のパートナーが凪くんだったから。
今度こそ、信じてもいい?
凪くんこそ、私の運命のひとだって。
デステニーが証明したんだから、間違いないんだって。
「……なんだ、同じだったのか」
凪くんがぽつりと呟いた言葉に、私は首を傾げる。すると、凪くんは照れたように「あー……」と頬をかいて。
「俺も、どうしても、りりのことが忘れられなくて、未練たらたらで、だったらもうデステニーとやらが決めてくれよってやけくそになった」
それが、七海学園高校を選んだもう半分の理由だったんだと、凪くんは言った。
釣り合わない、似ても似つかない。
月とすっぽんだと思っていたけれど────案外、似ているところもあるんだと、こんなところで気づく。