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それから、何度も何度も考えた。
何度も何度も考えて、何度も何度もたどりついた先は、どうしても。
どうしても、凪くんが好きだって気持ちで────。
ようやく決心がついたのは、学園祭の直前。
凪くんのことは、ずいぶん待たせてしまった。
でも、だからこそ。
必ず学園祭の間に伝えたいの。
自分の言葉で、ありったけの思いを。
そう決心したはいいものの。
「うわ、あの人すごいイケメン……!」
「名前聞きに行かないっ?」
凪くんのハイスペックぶりをなめていた。
外部からもたくさんのお客さんが来る学園祭では、ふたりきりになろうにもなかなかなれなくて、ふたりで一緒に回っていても、すぐに凪くんが呼び止められてしまう始末。
クラスの出しものの都合で、凪くんは王子様の格好をしていて、それはそれは似合っているから、声をかけられるのも当然といえば当然、なのだけど……。
「凪くんっ!」
痺れを切らした私が腕を引いて、思いつきで連れ込んだのは“ドキドキ脱出ゲーム”。 なんでも、暫定1位のカップル、鮫上×倉下ペアのクラスの出しものらしい。
セブンオーシャンのスマートウォッチを腕に取りつけて、心拍数を計る。その心拍数が一定の数値を超えて、「ピコーン」という音が鳴ると、鍵が開いて脱出できる仕組みらしい。
説明を受けて、あれよあれよという間に凪くんと狭いボックスに閉じこめられる。
ふたりきりの、この場所なら────。
よし、と心を決めて、口を開きかけたとき。
ピコーン! と、まさかの機械音。出どころは、凪くんが装着しているスマートウォッチから。
ピコーン、ピコーン、と音は止むことなく鳴り続ける。
凪くんは「しまった」という顔をしていて、私はおろおろと焦るばかりで。
ボックスの外から「脱出成功でーす!」と係の人の明るい声が聞こえてくる。