ꗯ.*
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早く凪くんに返事をしなきゃ。

そう思うのに、一向に答えを出せないまま時間ばかりが過ぎていく。



好きだ、って言ってくれて、泣きたくなるほど嬉しかった。

だって、私も凪くんのことが、好きだから。



だけど、だけど……。


好きだ、って気持ちだけで凪くんのとなりにいてもいいの?


何のとりえもない私は、凪くんの隣にいる資格はあるの?


不釣り合いなことに耐えられなくなって、また、凪くんを傷つけてしまうかもしれないのに。もう、そんなことはしたくないのに。



ぐるぐると悩んでいたタイミングで、期末試験の成績が発表された。スマホの画面をスクロールして確認して……。




「13位、藤吉凪……」



偏差値の高い七海学園での13位は、かなり上位だ。そして、対する私は。



「……120位、かあ」



ちょうど真ん中。

これでも頑張ったつもりだった。結果としては悪くはない、のかもしれないけれど、凪くんと比べるとてんでだめ。


やっぱり、私は。
私じゃ、凪くんの隣には────。



「凪、くん」



部屋に戻るなり、凪くんの袖を引いて。
決心が揺るがないうちに、と口を開く。

凪くんの目が上手く見れないのは、これから、また、心に嘘をつこうとしているから。



「ごめん、なさい」

「……」

「私、凪くんの気持ちには、やっぱり、答えられない、よ」




痛い。

胸の奥がギシギシと悲鳴を上げている。


でも、これが正解のはずだから。
凪くんには私じゃなくて、もっと、他に釣り合う素敵なひとがいるはずだから。



「だから、トレードして他の子と────」

「りり」



うつむく私の頬を凪くんが挟んで持ち上げる。
涙がにじんで揺れる視界の奥に、凪くんの真剣な表情が見えた。



「りり、ちゃんと俺の目見て言って」



そう言われて、ハッとした。
凪くんは、気づいているんだ。



私が私のほんとうの気持ちから逃げていることに。


そんな私の本心と向き合おうとしてくれるくらい凪くんは、本気で、私のことを思っていてくれているんだって今さら気づいた。



だめだ、もうこの恋に嘘はつけない。



自信が持てない私が嫌い。
とりえのない私が嫌い。


だけど、一番は、嘘つきな自分が、嫌い。



大好きな凪くんに、一番まっすぐでいたい相手に、嘘ばかりつき続けている自分が、醜くて仕方ない。




「っ、ごめん、凪くん」





ちゃんと、今度こそはちゃんと、向き合おう。

私のすぐにくじけてしまう弱い心から逃げずに。凪くんに恥じない私でいたいから。




「もう1回、ちゃんと考える。それで……今度は、ちゃんと、私のほんとうの気持ちを伝えるから、だから」

「うん、待ってる」




もう十分待たせているのに、凪くんはやっぱり優しく笑うんだ。