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「入学おめでとう諸君! 運命の相手との出逢いは果たしたかな?」
どうしよう、気まずい、どうしよう……。
凪くんとの思わぬ再会に心の整理がつかないまま、入学式が始まってしまった。
その場の流れで、凪くんと一緒に体育館に向かったのだけれど、あのあと凪くんはひとことも話さなくて、私も上手く顔を見れず表情の確認もできなくて、なにを考えているのかまったくわからない。
学園長の七海夫妻がなにか熱く語っているけれど、隣の凪くんに気をとられて内容が頭に入ってこなかった。
「決められたペアの変更や棄権ももちろん可能だが私達はより多く真実のカップルがデステニーによって生まれることを願っているよ」
学園長の言葉にハッとする。
そう、私が必死に勉強してけっして偏差値が低いわけではなかったこの高校に入学したのは、運命のパートナーに出逢うため。
学園長の七海夫妻が社長をつとめる、世界一のシェア数を誇る大IT企業 “セブンオーシャン” が開発したマッチングシステム “デステニー” に見つけてほしかったの。私のほんとうの運命のひとを。
そしたら。
そしたら────別れてもずっと、ずっと忘れられなかった凪くんへの恋心を、あれは “運命なんかじゃなかった” って今度こそ諦められるって、思ったのに。
その運命の相手が、凪くんなんて。
私の計画は、入学初日からすべて水の泡になってしまった。
「さぁ若者達よ! 大いに青春してくれ!」
「おー!!」
「返事は『ウェイ』だ」
ウェーイ! と盛りあがる体育館のテンションについていけず、私はうつむいて、ただひたすら凪くんのことばかり考えていた。