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凪くんの足を引っ張りたくない。凪くんの夢のための力になりたい。固い決心を胸に、デート遠足に体育祭……と次々に降りかかる学園の課題を乗りこえる日々。
そんな中、私は凪くんとの距離をはかりかねていた。
「りり。手」
「う、うん」
「そうじゃなくて……こう」
デート遠足のとき、ふつうに手を繋ごうとしたら、指の隙間にするりと凪くんが指をすべりこませて、恋人繋ぎになった。
平然と涼しげな凪くんとは反対に、私はドギマギするばかりで肝心のデートの記憶はほとんど残っていない。
体育祭の借り物競争では “好きな人” のお題でまっすぐ私のところに向かってきた凪くん。
「私なんかで、いいの?」
パートナーだから選ばれただけだとわかっていたけれど、それでも自信のなさが飛び出して思わず尋ねてしまった私に、凪くんはふっと笑って。
「りりが来てくんなきゃ、俺、一緒に走る相手いなくなる」
なんて、甘い。
学園にいるときの凪くんが甘く感じるのは、きっと気のせいなんかじゃない。だって、付き合っていた頃ですら、こんなにわかりやすく甘い態度は、なかった。
だけど、ひとたび寮の部屋に帰ってくれば。
「凪くん、お風呂あがったよ」
「……ん」
「凪くん?」
「りり、近い。ちょっと離れて」
とたんに素っ気なくなる。
不思議に思って顔をぐいと近づければ、耳を赤らめた凪くんはふいと顔を背けてしまう。部屋にいるときは、ほとんど目が合わない。



