さっそく洗礼を受けた私は助けを求めるように、凪くんを見つめてしまう。
「ふ、藤吉くん……」
どうしよう。
口にしなくても顔に出ていたのか、凪くんは落ちついた口調で私をなだめる。
「別にいーよ」
「え? いーよ、って」
「無理に参加しなくて。ハードル高いだろ」
高いよ。
ハードル、高すぎる。
ハグ、なんて……。
付き合っていたときですら、したことがなかった。
手を繋ぐだけで精いっぱいだったんだもん。
そんな私に合わせてくれようとする凪くんは、やっぱり優しい。そんな凪くんに甘えてしまいたくなるけれど。
「ううん、頑張る……!」
「は?」
「だって……、藤吉くんはいつかセブンオーシャンで働くのが夢で、ここにいるんだよね。だったら、こういう課題は積極的に参加した方がいいに決まってる」
金の夫婦の卵には興味がないと言っていた。
それは私も同じ。
だから、学園の課題に真剣に取り組む必要はないのかもしれないけど……。
凪くんの夢がセブンオーシャンで働くことで、その夢に近づくためにこの学園にいるのなら、七海夫妻をはじめとしたセブンオーシャンの社員のひとたちに、凪くんに好印象を抱いてもらったほうが絶対いい。
そのためには、課題への参加は欠かせない。
「藤吉くんの、力になりたいの」
この数日間で考えた。
私は、凪くんには到底不釣り合いだけど……それはきっと覆せないけれど、せめて、凪くんの足を引っ張りたくない。
デステニーに選ばれてしまった以上、私が凪くんのためにできることは、凪くんが凪くんの夢に近づけるためにできる限り力を尽くすこと。