渚を見送った後、クローゼットに突っ込んである洗濯物を思いだし、片付ける。
片付けをしているとスマホが鳴った。美紅からの電話だ。


「もしもし」
「もしもし。結奈大丈夫?」
大丈夫とは、今の出来事に対しての大丈夫だろうか。渚と2人で居たのはまだ話してないはず。と思っていたら
「二日酔い大丈夫?」
そっちの心配だったか。間違えて口走らなかった事にホッとしながら
「大丈夫。シャワー浴びたり、ご飯食べたら良くなったよ」
「良かった。結構酔ってたから、少し心配してた。それと高橋渚さんとどうなったのかも気になるしね」
美紅は気になってるだろうなと思ってた。
何処から話そう。
話す事は沢山あるが話がまとまらないため、とりあえず
「今暇?暇だったら家来ない?」
と誘う。
「行く」
「家出る時、LINEちょうだい」
「了解。じゃあまた後で」
「待ってるね」。

 電話を切り『きらきら星変奏曲』を鼻歌で歌いながら美紅を待つ。


「ピンポーン」
インターフォンが鳴り美紅を部屋に入れる。
部屋に着くなり急いだ口調で美紅が話始める。
「で?どうなった?渚さんとあの後何かあった?」
「何にもなかった訳ではないけど、美紅が期待してるような事にはなってないよ」
「えー、家まで送り届けたのに?」
「うん。でもさっき車の鍵を届に来て、オムライスを一緒にたべた。それくらいだよ」
「何かあったじゃん」
ニヤニヤしながら美紅が「次は?」「それで?」
など聞いてくる。
一通り話終えると
「やっぱり2人お似合いだよ。結奈が酔っぱらってた時も、男友達から結奈の事守ってくれてたように見えたし」
「そう言えば何で美紅送ってくれなかったのよー」
少し拗ねながら聞く。
「渚さんが送るって言ってたし、仕事関係の人に下手な事は出来ないと思って任せた」
「もーー」
と言いながら少しだけ怒ってみせる。
「それに彼氏が迎えに来るって言ったから、成り行きとは言え、他の男の人と一緒に居るのは良くないでしょ」
「あいかわらずラブラブだね。結婚とかしないの?」
「今の所まだ良いかなー、まだ入社一年目だし、彼氏も仕事変わったばっかりだしもう少し落ち着いてから考える。結奈も早くいい人見つけなよ!」



 美紅のLINEの通知音がなる。
気が付けばお茶1杯で2時間もお喋りしていた。
美紅がLINEに目をやる。
「私達と同期入社の直美(なおみ)って子分かる?」
知ってはいるがあまり印象は良くない。
「顔と名前が一致する程度には分かるよ」
「夜ご飯一緒に食べに行かない?だって」
「私、直美のこと正直苦手かも」
素直に話す。

 入社してすぐの頃、住所や名前、通勤時間など色々と記入済みの書類を、ファイルに入れて持っていた私。
そこに直美が来て、『私のと一緒に持っていってあげる』とファイルを私の手からとり持っていった。
後日書類が提出されていない事を上司から聞いた。
それ以来関わらないようにしようと思っていたのに。なぜ。
「私も正直得意ではないんだよね。なぜか最近よく話かけられて……私も2人だと気まずいから結奈も一緒に来てくれると助かる。」
人の良い美紅の事だ。きっと断れないでいるのだと思い
「美紅の為に今日は一緒に行ってあげる。でも次に嫌なときは断りなよ」
「ありがとう」

7:00に近所のファミレスに集合に決まった。