*** 「 先生と」 ***


「先生、雪!降ってきた!」
窓際に立ち、降りはじめた雪を眺めて言った。
先生は、へぇ、と短い返事をするだけ。
素っ気ないのはいつものこと。

「積もるかな?」
「どうだろう」
「わたし、雪は好きだけど、寒いのは苦手」
「そう。……というか、早く帰りなさい」
積もるといけないから、と付け足した先生は、開いていた日誌をパタンと閉じた。

「送ってくれたりする?」
「特別扱いはしない」
「……約束、だもんね」

【卒業するまで先生と生徒でいる】
10分足らずの教室デートでも手に触れることさえ許されない。

「卒業したら、いっぱいデートしようね」
わたしの言葉に目を細めた先生。
なにも言わないけど、同じ気持ちでいてくれるのだと思う。

「じゃあ、帰ります。またね」
「さよなら。気をつけて」
先生がめずらしく手を挙げて応えてくれた。

それだけで頑張れる。

「風邪ひかないように。頑張れ、受験生」




《完》