*** 「 後輩くんと」 ***
「キス、したことありますか?」
障害物リレーで使うバットを倉庫に取りに来たとき、同じ委員会の後輩くんに訊かれた。
なんてことを訊くんだと思いつつ、
「まぁ、いちおう」
と答えると、
「いいなぁ」
と肩を落とす彼。
キスくらい経験済みだと思っていた。
彼を見かけるとき、そばにはいつも違う女の子がいたから。
「そのうちできるよ」
なんてなぐさめてみたものの。
「いや、そうじゃなくて」
サラリと否定された。
じゃあ、なに?と言いかけたとき、彼の顔がグンッと近くなる。
「ボクだってしたことありますよ。
いいなぁって言ったのは、相手の人がうらやましいな、って意味です」
「……え、」
間近で見る彼の表情に心臓が激しく反応する。
いつもふわふわと笑う彼とは別人みたいで。
「ボクも、したいです」
雰囲気にのまれてはいけないと思うのに、身動きがとれない。
触れるまで、あと……数センチ。
《完》
「キス、したことありますか?」
障害物リレーで使うバットを倉庫に取りに来たとき、同じ委員会の後輩くんに訊かれた。
なんてことを訊くんだと思いつつ、
「まぁ、いちおう」
と答えると、
「いいなぁ」
と肩を落とす彼。
キスくらい経験済みだと思っていた。
彼を見かけるとき、そばにはいつも違う女の子がいたから。
「そのうちできるよ」
なんてなぐさめてみたものの。
「いや、そうじゃなくて」
サラリと否定された。
じゃあ、なに?と言いかけたとき、彼の顔がグンッと近くなる。
「ボクだってしたことありますよ。
いいなぁって言ったのは、相手の人がうらやましいな、って意味です」
「……え、」
間近で見る彼の表情に心臓が激しく反応する。
いつもふわふわと笑う彼とは別人みたいで。
「ボクも、したいです」
雰囲気にのまれてはいけないと思うのに、身動きがとれない。
触れるまで、あと……数センチ。
《完》