ミントに焦がれるチョコレート 幼なじみは甘くない

 三月半ばだっていうのに、構内の桜は花を咲かせ始めた。膨らんでいるつぼみを見て、もう入学して一年が経とうとしているのかと、驚いてしまう。

 二月から私と三次先輩は本の借り貸しをするようになった。感想を話し合ったりしてすごく楽しい。生徒会室での時間がより楽しくなった。

 一方で、りんちゃんはちょっとよそよそしい。毎朝の通学で追い越されなくなった。どうやら私よりも早い時間に家を出ているみたい。睦美先輩と登校してるのかな?
 やっぱり、二人は付き合い始めたのかな。そうなると、やっぱり私と二人で話し対する機会って減らすよね。

「そうだ、これ、山本さんに」

 放課後、手芸部に行く前に生徒会室に寄ったら三次先輩が本と一緒に可愛らしい包みをくれた。

「わぁ、ありがとうございます! 私、今日は貸せる本がないんです。すみません。これは?」
「あはは、今日何の日か知ってる?」

 私は頭の中に数字を思い浮かべる。今日は三月十四日だ。

「あ! ホワイトデーですね。もらっていいんですか?」
「当たり前だよ」

 爽やかな笑顔の三次先輩。とっても素敵! 私は遠慮なく包みを受け取る。中にはうさぎの刺繍が付いたミントブルーのハンカチだった。私の好みのドストライクです。

「ありがとうございます! 私、うさぎもミントブルーも大好きで!」
「だと思ったよ。いろいろそのカラーとうさぎ柄だもんね」

 優しい笑顔でそう言われて、私はちょっと恥ずかしくなった。どうやら、私は色々わかりやすいみたい。こんな状態では、三次先輩に私の気持ちがバレてしまうのも時間の問題では……いや、もう気づかれてるのかな?

「来月からついに始動だね」
「頑張ります」
「頼りにしてるよ」

 四月からついに活動が開始となる。ドキドキと、ワクワクと、ちょっとの不安が私の中で複雑に絡み合っている。

「まずは入学式。新入生をしっかり見てやって」
「はい! 私も、去年先輩にお世話になりましたから」
「え?」

 一年前のことを思い出す。小学校よりもずっと広い校舎で、私は学校の中で迷子になっていた。心細くてひどく不安だった時に、三次先輩が「大丈夫?」って声をかけてきてくれたのだ。
 知らない先輩に優しくしてもらって、不安がふっと軽くなったことを覚えている。この学校には、優しい人がいるって思ったら、心細さが消えた。三次先輩は私の恩人だ。三次先輩に憧れることで、学校に行くのが楽しみでもあった。まさか、こんなふうに話せるようになるとは思ってなかったけど。

「私、入学してすぐの時に学校で迷子になって、先輩に案内してもらったことがあるんです。友達ともはぐれていて、本当に心細かった」
「あぁ、あれね。あれはね……うん、懐かしいね」

 心が震えたような気がした。私も、先輩のように誰かの役に立てたら嬉しい。下級生が入ってくるまで、あと少し――