みんなから送られてきている「あけましておめでとう!」っていうメッセに返信することができたのは元旦のお昼になってからだった。やっと熱が下がった。
生徒総会があった翌日、私は熱を出した。そのまま学校はお休みになるから授業を休むことはなかったけど、光と里桜ちゃんとクリスマス会をする予定だったのに、参加できなかった。二人はお見舞いに来てくれたけど、私は眠っていて会うことが出来なかった。
「知恵熱がでてんだろうねぇ。はい、おとし玉」
「ありがとう~。あれ、新奈ちゃんは?」
新奈ちゃんっていうのは、私のお姉ちゃん。東京の大学に行っているんだけど、年末から帰ってきている。たくさん話したいことがあるのに、寝込んでいて全然話せてない。
「新奈は高校の友達と初詣って言っていたわよ」
「いいなー。私も光や里桜ちゃんと初詣行きたい」
「あんた病み上がりだからねぇ。午後からおじいちゃんおばあちゃんが来るから今日は行けないし。明日、りんちゃんとでも一緒に行ったら?」
「りんちゃんは一緒に行ってくれないよ~」
「何言ってんのよ、前は一緒に行ってたじゃない」
「それいつの話よ~」
りんちゃんと一緒にりんご飴を食べるために近くの神社に行っていたのは小学生の時の話だ。しかも三年生くらい。あれ以来行ってないなぁ。
結局初詣にはいかずに午後から家に来たおじいちゃんおばあちゃんとこたつでぬくぬく。お年玉をもらってお財布もぬくぬく。
「奈瑠ちゃん生徒会に入ったんね、すごいねぇ」
「いやいや、まだ何にもやってないから」
「学校がもっと楽しくなるねぇ」
おばあちゃんは目尻にしわを寄せてにっこりと笑った。
「大変だと思うけど……やりがいありそうだなって思ってる」
「あるよ。学校のことがよくわかるだろうし、自分たちで行事を動かせるってすごいことだよ」
にこにこ、おばあちゃんは嬉しそう。お父さんとおじいちゃんは久しぶりに将棋に白熱している。真剣な顔をしたお父さん、久しぶりに見るかも。
夜ご飯の前にお姉ちゃんが帰ってきた。大学生になって今まで以上に華やかになったお姉ちゃんは、私のお姉ちゃんだとは思えないくらい可愛い。
「奈瑠大丈夫~お土産買って来たよー! おじいちゃんおばあちゃんいらっしゃい、あけましておめでとう!」
「新奈ちゃんまた可愛くなったねぇ」
「大学生効果~みんなめっちゃオシャレなの!」
大学生って華やかそう。お姉ちゃんが一際大人に見えてしまう。中学生になってちょっと大人になったような気がしていたけど、大学生と比べたらまだまだ子供だ。でも、睦美先輩なら大学生と並んでも全然子供っぽく見えないかも。いいなぁ。
夜ご飯終わると、私はお姉ちゃんと一緒に自分の部屋に戻って話し込む。
「わぁ、このうさぎ可愛い! さては里桜ちゃんからのプレゼントだなぁ?」
「あったりー」
「奈瑠も器用だもんねぇ。こっちにいる間に可愛いアクセサリー作ってもらおうかな」
「いいよ~! 文化祭でめっちゃ作ったから腕が上がったと思う」
久しぶりのお姉ちゃん。なんだか嬉しくて頬があったかくなる。
「期待してるー! そうそう、代わりと言っちゃなんだけど。奈瑠にいろいろプレゼントしようと思って荷物持って帰ってきたんだよね。洋服とかあげようと思って」
お姉ちゃんはキャリーケースの中から可愛いスカートやニット、ワンピースを取り出す。
「えぇ……可愛いけど私には似合わないんじゃない?」
「何言ってるのよ! 背丈も一緒だし、似合うってー! そうそう、使わないコスメもあげるー」
今度はパンパンの化粧ポーチからいろんな化粧品を取り出した。
「明日メイクしてあげるよ! デートの予定とかないのー? ほら、夏休みに帰った時に言ってた先輩とか……」
「あ、あるわけないじゃん!」
「えぇーでも生徒会入ったんでしょう? これから花が咲くかもしれないから、ちょっと教えてあげるって」
お姉ちゃんみたいに可愛くなれたら嬉しい。私はドキドキしながらお姉ちゃんにメイクを教えてもらう約束をした。
お姉ちゃんの大学の話、私の学校のこと――色々話しているうちに夜が更けてしまう。あくびが出ちゃうけど、まだまだ眠りたくない。
でも、いつの間にか眠ってしまったようで、気が付いたら朝になっていた。
洗面所で顔を洗うと、お姉ちゃんがニコニコにながらメイク道具を持ってくる。
「奈瑠の顔描いてあげるから着替えておいでー。私が昨日あげたニットワンピ!」
「あれ大人っぽすぎるよ」
「じゃあ一緒に選んであげる」
すっかり着せ替え人形状態。結局白のニットワンピを着たけど、ちょっと恥ずかしい。
「いやだ似合うじゃん! さすが私の妹! 可愛い! 次はメイクメイク~」
お母さんの鏡台に座って、お姉ちゃんが前髪をヘアピンで上げてくれる。
「奈瑠の肌めっちゃ綺麗! ファンデ要らないね~羨ましい!」
日焼け止めをつけてから、パウダーをはたく。眉毛を描いてもらっただけで印象が全然違って見えた。自分の顔じゃないみたい。
「アイシャドウ何色がいい?」
「えっと……ミントブルー」
「さすがチョコミン党。じゃぁアイラインをチョコレートカラーにして、春を先取りしてミントグリーン塗っちゃおう」
ビューラーで睫毛を上げて、マスカラをつけると目がすごく大きく見えた。ますます自分の顔じゃないみたい。
「すごい! 奈瑠めっちゃ睫毛長い!」
ポンポンとチークを入れて、リップを引いていく。お姉ちゃんはとっても楽しそう。
「はい完成! めっちゃ可愛い! 私センスあるー!」
鏡を見て私はパシパシと瞬きをした。お姉ちゃんみたいな顔をした自分が鏡に写っている。ちょっと可愛いかもって思ってしまった。自分が自分じゃないみたい。メイクって魔法だ!
「よーし、せっかく可愛くなったことだし、一緒に買い物行こう!」
「この顔で!?」
「もちろん!」
誰かに会ったら恥ずかしい。でもせっかくお姉ちゃんがメイクしてくれたのだから、意を決してこのまま出かけることにした。
一張羅のロングブーツに足を入れると玄関を出る。同時に隣の扉がかちゃりと開く。
「あ……」
隣の扉からりんちゃんが出てきた。黒のダッフルコートに黒のマフラーを巻いている。ブラックチョコレートみたいに真っ黒だ。私の顔を見て、ちょっと目を見開く。
「あ、凛太郎君だ! あけましておめでとう!」
「……おめでとうございます」
「おっきくなったねー」
「普通です」
りんちゃんは挨拶もそこそこに駆けだそうとする。去り際、耳元で「似合わねぇ」って言われた。そのまま階段を駆け下りていく。
「階段なんて中学男子は元気だねぇ」
タンタンタンって軽快に降りていく足音が響いた。離れていく足音が、すごく悲しい音に聞こえる。りんちゃんに見られた。似合わないって言われた。恥ずかしくなって顔がかぁっと熱くなる。私はくるりと振り返って家に帰ろうとした。
「あれ、奈瑠どうしたの? え!?」
「なんでもない。ごめん、新奈ちゃん着替えてくる」
私は家の中に駆け込んでお姉ちゃんが選んでくれた服を脱ぐ。いつものキュロットとニットに着替えた。お化粧はどうやって落としていいのかわからない。ごしごしと石鹸で落としたら目が真っ黒になった。
「パンダみたい……」
そうこうしていると、見かねたお姉ちゃんが綺麗な色の化粧品をコットンにとって、目に当ててくれた。
「クレンジングで落とさないと綺麗に落ちないよ。ごしごしこするとせっかく綺麗な肌が傷ついちゃうから、こうやって優しく落とすんだよ」
「ごめん新奈ちゃん……」
「いいのいいの。恥ずかしくなっちゃった?」
私はこくんとうなずくお姉ちゃんが優しくコットンでなでると、みるみるうちに元の私の顔になった。
「もう一回出かけよう。今度は奈瑠のお気に入りの服で! なにか美味しい物奢ってあげる!」
ごめんね新奈ちゃん。私は心のなかで何度も何度も謝った。自分では可愛いかもって思ってたのに。りんちゃんに似合わないって言われて自身を失ってしまったのだ。
りんちゃんもりんちゃんだ。お姉ちゃんは「凛太郎君は子供だなって」笑ってくれたけど。お姉ちゃんに話しているうちに怒りが湧いてきた。りんちゃんのやつ、あんなんじゃ絶対にモテないんだから!
お姉ちゃんの奢りで人気のスイーツ店でケーキを食べているとどんどん怒りが湧いてきた。
りんちゃんなんか、だいっきらいなんだから!
生徒総会があった翌日、私は熱を出した。そのまま学校はお休みになるから授業を休むことはなかったけど、光と里桜ちゃんとクリスマス会をする予定だったのに、参加できなかった。二人はお見舞いに来てくれたけど、私は眠っていて会うことが出来なかった。
「知恵熱がでてんだろうねぇ。はい、おとし玉」
「ありがとう~。あれ、新奈ちゃんは?」
新奈ちゃんっていうのは、私のお姉ちゃん。東京の大学に行っているんだけど、年末から帰ってきている。たくさん話したいことがあるのに、寝込んでいて全然話せてない。
「新奈は高校の友達と初詣って言っていたわよ」
「いいなー。私も光や里桜ちゃんと初詣行きたい」
「あんた病み上がりだからねぇ。午後からおじいちゃんおばあちゃんが来るから今日は行けないし。明日、りんちゃんとでも一緒に行ったら?」
「りんちゃんは一緒に行ってくれないよ~」
「何言ってんのよ、前は一緒に行ってたじゃない」
「それいつの話よ~」
りんちゃんと一緒にりんご飴を食べるために近くの神社に行っていたのは小学生の時の話だ。しかも三年生くらい。あれ以来行ってないなぁ。
結局初詣にはいかずに午後から家に来たおじいちゃんおばあちゃんとこたつでぬくぬく。お年玉をもらってお財布もぬくぬく。
「奈瑠ちゃん生徒会に入ったんね、すごいねぇ」
「いやいや、まだ何にもやってないから」
「学校がもっと楽しくなるねぇ」
おばあちゃんは目尻にしわを寄せてにっこりと笑った。
「大変だと思うけど……やりがいありそうだなって思ってる」
「あるよ。学校のことがよくわかるだろうし、自分たちで行事を動かせるってすごいことだよ」
にこにこ、おばあちゃんは嬉しそう。お父さんとおじいちゃんは久しぶりに将棋に白熱している。真剣な顔をしたお父さん、久しぶりに見るかも。
夜ご飯の前にお姉ちゃんが帰ってきた。大学生になって今まで以上に華やかになったお姉ちゃんは、私のお姉ちゃんだとは思えないくらい可愛い。
「奈瑠大丈夫~お土産買って来たよー! おじいちゃんおばあちゃんいらっしゃい、あけましておめでとう!」
「新奈ちゃんまた可愛くなったねぇ」
「大学生効果~みんなめっちゃオシャレなの!」
大学生って華やかそう。お姉ちゃんが一際大人に見えてしまう。中学生になってちょっと大人になったような気がしていたけど、大学生と比べたらまだまだ子供だ。でも、睦美先輩なら大学生と並んでも全然子供っぽく見えないかも。いいなぁ。
夜ご飯終わると、私はお姉ちゃんと一緒に自分の部屋に戻って話し込む。
「わぁ、このうさぎ可愛い! さては里桜ちゃんからのプレゼントだなぁ?」
「あったりー」
「奈瑠も器用だもんねぇ。こっちにいる間に可愛いアクセサリー作ってもらおうかな」
「いいよ~! 文化祭でめっちゃ作ったから腕が上がったと思う」
久しぶりのお姉ちゃん。なんだか嬉しくて頬があったかくなる。
「期待してるー! そうそう、代わりと言っちゃなんだけど。奈瑠にいろいろプレゼントしようと思って荷物持って帰ってきたんだよね。洋服とかあげようと思って」
お姉ちゃんはキャリーケースの中から可愛いスカートやニット、ワンピースを取り出す。
「えぇ……可愛いけど私には似合わないんじゃない?」
「何言ってるのよ! 背丈も一緒だし、似合うってー! そうそう、使わないコスメもあげるー」
今度はパンパンの化粧ポーチからいろんな化粧品を取り出した。
「明日メイクしてあげるよ! デートの予定とかないのー? ほら、夏休みに帰った時に言ってた先輩とか……」
「あ、あるわけないじゃん!」
「えぇーでも生徒会入ったんでしょう? これから花が咲くかもしれないから、ちょっと教えてあげるって」
お姉ちゃんみたいに可愛くなれたら嬉しい。私はドキドキしながらお姉ちゃんにメイクを教えてもらう約束をした。
お姉ちゃんの大学の話、私の学校のこと――色々話しているうちに夜が更けてしまう。あくびが出ちゃうけど、まだまだ眠りたくない。
でも、いつの間にか眠ってしまったようで、気が付いたら朝になっていた。
洗面所で顔を洗うと、お姉ちゃんがニコニコにながらメイク道具を持ってくる。
「奈瑠の顔描いてあげるから着替えておいでー。私が昨日あげたニットワンピ!」
「あれ大人っぽすぎるよ」
「じゃあ一緒に選んであげる」
すっかり着せ替え人形状態。結局白のニットワンピを着たけど、ちょっと恥ずかしい。
「いやだ似合うじゃん! さすが私の妹! 可愛い! 次はメイクメイク~」
お母さんの鏡台に座って、お姉ちゃんが前髪をヘアピンで上げてくれる。
「奈瑠の肌めっちゃ綺麗! ファンデ要らないね~羨ましい!」
日焼け止めをつけてから、パウダーをはたく。眉毛を描いてもらっただけで印象が全然違って見えた。自分の顔じゃないみたい。
「アイシャドウ何色がいい?」
「えっと……ミントブルー」
「さすがチョコミン党。じゃぁアイラインをチョコレートカラーにして、春を先取りしてミントグリーン塗っちゃおう」
ビューラーで睫毛を上げて、マスカラをつけると目がすごく大きく見えた。ますます自分の顔じゃないみたい。
「すごい! 奈瑠めっちゃ睫毛長い!」
ポンポンとチークを入れて、リップを引いていく。お姉ちゃんはとっても楽しそう。
「はい完成! めっちゃ可愛い! 私センスあるー!」
鏡を見て私はパシパシと瞬きをした。お姉ちゃんみたいな顔をした自分が鏡に写っている。ちょっと可愛いかもって思ってしまった。自分が自分じゃないみたい。メイクって魔法だ!
「よーし、せっかく可愛くなったことだし、一緒に買い物行こう!」
「この顔で!?」
「もちろん!」
誰かに会ったら恥ずかしい。でもせっかくお姉ちゃんがメイクしてくれたのだから、意を決してこのまま出かけることにした。
一張羅のロングブーツに足を入れると玄関を出る。同時に隣の扉がかちゃりと開く。
「あ……」
隣の扉からりんちゃんが出てきた。黒のダッフルコートに黒のマフラーを巻いている。ブラックチョコレートみたいに真っ黒だ。私の顔を見て、ちょっと目を見開く。
「あ、凛太郎君だ! あけましておめでとう!」
「……おめでとうございます」
「おっきくなったねー」
「普通です」
りんちゃんは挨拶もそこそこに駆けだそうとする。去り際、耳元で「似合わねぇ」って言われた。そのまま階段を駆け下りていく。
「階段なんて中学男子は元気だねぇ」
タンタンタンって軽快に降りていく足音が響いた。離れていく足音が、すごく悲しい音に聞こえる。りんちゃんに見られた。似合わないって言われた。恥ずかしくなって顔がかぁっと熱くなる。私はくるりと振り返って家に帰ろうとした。
「あれ、奈瑠どうしたの? え!?」
「なんでもない。ごめん、新奈ちゃん着替えてくる」
私は家の中に駆け込んでお姉ちゃんが選んでくれた服を脱ぐ。いつものキュロットとニットに着替えた。お化粧はどうやって落としていいのかわからない。ごしごしと石鹸で落としたら目が真っ黒になった。
「パンダみたい……」
そうこうしていると、見かねたお姉ちゃんが綺麗な色の化粧品をコットンにとって、目に当ててくれた。
「クレンジングで落とさないと綺麗に落ちないよ。ごしごしこするとせっかく綺麗な肌が傷ついちゃうから、こうやって優しく落とすんだよ」
「ごめん新奈ちゃん……」
「いいのいいの。恥ずかしくなっちゃった?」
私はこくんとうなずくお姉ちゃんが優しくコットンでなでると、みるみるうちに元の私の顔になった。
「もう一回出かけよう。今度は奈瑠のお気に入りの服で! なにか美味しい物奢ってあげる!」
ごめんね新奈ちゃん。私は心のなかで何度も何度も謝った。自分では可愛いかもって思ってたのに。りんちゃんに似合わないって言われて自身を失ってしまったのだ。
りんちゃんもりんちゃんだ。お姉ちゃんは「凛太郎君は子供だなって」笑ってくれたけど。お姉ちゃんに話しているうちに怒りが湧いてきた。りんちゃんのやつ、あんなんじゃ絶対にモテないんだから!
お姉ちゃんの奢りで人気のスイーツ店でケーキを食べているとどんどん怒りが湧いてきた。
りんちゃんなんか、だいっきらいなんだから!

