ミントに焦がれるチョコレート 幼なじみは甘くない

 今日から新学年の始まり。私は編み込んだ髪の毛にチョコミントカラーのシュシュを結んで階段を降りる。りんちゃんがホワイトデーにプレゼントしてくれたシュシュだ。私の好きな色。

「奈瑠、髪の毛ぼさぼさになってるぞ」

 マンションの駐輪場に向かうところで、りんちゃんが追い付いて来て私の頭をぽんて叩いた。りんちゃんの首には、私がプレゼントしたチョコミントカラーのネックウォーマーがはめられている。春先はまだ冷えるからって、使ってくれてるの。とっても嬉しい。

「え、嘘!」
「うっそ」
「もう、りんちゃん!」

 真新しいブレザーに身を包んだりんちゃんを見て顔が熱くなる。高校の制服姿、すごく格好いい。

「なに赤くなってんだよ」
「なってないよ」

 なんて反論するけど、絶対私の顔、赤くなってるよね。りんちゃんはバス通学にかわったので、途中まで一緒に歩いていく。信号が赤になったので立ち止まった。

「おまえ、心配してるだろ?」
「……してるよ。りんちゃんモテそうだもん」
「おまえの妄想。」

 りんちゃんはおかしそうに笑った。心配だよ。高校には、睦美先輩みたいに綺麗な人がたくさんいそう。私のことなんか――
 そう考えていると信号が青に変わる。

「おい、青に変わったぞ」

 この信号を渡り終えたらりんちゃんとはお別れだ。少し、寂しいな──。
 なんて思いながら信号を渡る。

「もう、待ってよりんちゃん」

 もう少し、一緒にいたい。ほんの、少しだけでいいから。

「奈瑠」

 信号を渡り終えたところで名前を呼ばれた。りんちゃんの方を向くと、突然唇に柔らかな感触が降ってくる。触れるだけの優しいキス──。
 爽やかなミントの香りが私を包む。

「心配すんなよ、バーカ。俺にはおまえしかいないから。つーか俺だってな、おまえのこと心配してんだからな。おまえ、鈍感だから余計に心配」

 りんちゃんはそのまま走ってバス停に向かっていった。その背中が見えなくなるまで見送ってから、私もペダルに足を乗せる。見上げた空がとっても青い。

「わ、私も大丈夫だよ!」

 私だって、りんちゃんのことを好きなこと気持ちは、絶対に変わらない。

 爽やかな風が吹き抜ける。これから、ミントみたいに爽やかで、チョコレートみたいに甘い日々が始まる――かもしれない。