私とねるまが談笑しながら歩いていると、市場が見えてくる。市場に姿を現すと、焔の民達がチトセと透李に睨まれない程度に私に近付いて話しかけてくる。炎の国はお父様が奴隷制度を廃止し、商業国家になるまで大きくなったため、裕福な暮らしをしている国民に王族は慕われている。
「ひめさまー!」
「でんかだー!」
「今日もかっこいい!」
小さな子供達も私を慕ってくれている。少し目線を下げてその子達と談笑していると、
「きゃぁ!!」
と女性の叫び声と
「ひったくりだ!」
と男性の叫び声が聞こえる。
私が向かおうとするとチトセに制され、透李がいつになく素早く走り出した。普段はカイトシールドで相手の剣を薙ぎ払うのが彼の戦い方だがその時彼の手にはアサシンナイフが握られていた。
透李はひったくり犯にみるみるうちに追いつき、両腕を後ろ手に掴み、首元にナイフを押し当てた。
「その禁断の供物が封印されし器を渡してもらおうか」
透李はそう言って彼から白いハンドバッグを受け取り、その男の首根っこを掴んだまま戻ってくる。チトセは素早く男を糸で拘束した。そして、彼に小言を言いながらどこかに連れていく。透李はその間にハンドバッグを女性に渡す。
「この器、封印が解かれぬよう自らでしかと封じておくのだな」
彼女の手を取りハンドバッグを握らせた。
「あ、ありがとう、ございます」
「貴様のためでは無い」
透李冷たくいい、私の元に近付いて来ようとすると、彼女から声がかかる。
「あのっ、お名前は?」
焔の民には珍しく、透李の名前を知らないらしい。透李はファンクラブの者でなくても話題に上がるくらい目立つ奴だ。透李も少し驚いた顔をしたが、すぐいつもの自信に満ち溢れた顔に戻り、意気揚々自己紹介をした。
「我が名は草ヶ谷 透李!神の加護を持ちし者!この地を楽園至らしめんとして現れた者だ!」
「草ヶ谷 透李様。覚えておきます。ありがとうございました」
女性はそういうと上品にお辞儀し、立ち去った。透李が私の元に帰ってきたのと同時にチトセも帰ってきた。
「お待たせいたしました、緋女様。ではデートを続けましょう」
チトセがそう言って、私に右手を差し出して来たのでその手に左手をのせる。彼は優しく私の手を包み込むと歩き出す。普段は私の後ろに着いてくるだけの彼だが危ない事件があった時はこうして私の手を取って歩く。小さい頃、怖い見た目の人にぶつかったあとずっとチトセにくっついていたから、チトセもそれが癖になっているのだ。あの頃の私はお父様とお母様に蝶よ花よと可愛がられながら育てられた王女だったため怖がりだったのだ。
4人で歩きながらねるまにお菓子を買ってあげたり、チトセが帰りに買う食材を思案しているうちに市場を通り過ぎる。市場を抜ければここからはねるまと別行動だ。
「じゃあまた王宮で。いってきます!またねひめ!」
ねるまはそういうと私の返事も聞かず駆け出した。ねるまは自分の生まれ育った孤児院が大好きでシスターにもすごく懐いている。彼からしてみたら孤児院こそ自分の家のような感覚なのだろう。
「おい」
透李が私に声をかけた。ねるまの姿を見送って少しぼーっとしていたらしい。私ははっとするとチトセの手を握りなおしてまた歩き出した。
「ひめさまー!」
「でんかだー!」
「今日もかっこいい!」
小さな子供達も私を慕ってくれている。少し目線を下げてその子達と談笑していると、
「きゃぁ!!」
と女性の叫び声と
「ひったくりだ!」
と男性の叫び声が聞こえる。
私が向かおうとするとチトセに制され、透李がいつになく素早く走り出した。普段はカイトシールドで相手の剣を薙ぎ払うのが彼の戦い方だがその時彼の手にはアサシンナイフが握られていた。
透李はひったくり犯にみるみるうちに追いつき、両腕を後ろ手に掴み、首元にナイフを押し当てた。
「その禁断の供物が封印されし器を渡してもらおうか」
透李はそう言って彼から白いハンドバッグを受け取り、その男の首根っこを掴んだまま戻ってくる。チトセは素早く男を糸で拘束した。そして、彼に小言を言いながらどこかに連れていく。透李はその間にハンドバッグを女性に渡す。
「この器、封印が解かれぬよう自らでしかと封じておくのだな」
彼女の手を取りハンドバッグを握らせた。
「あ、ありがとう、ございます」
「貴様のためでは無い」
透李冷たくいい、私の元に近付いて来ようとすると、彼女から声がかかる。
「あのっ、お名前は?」
焔の民には珍しく、透李の名前を知らないらしい。透李はファンクラブの者でなくても話題に上がるくらい目立つ奴だ。透李も少し驚いた顔をしたが、すぐいつもの自信に満ち溢れた顔に戻り、意気揚々自己紹介をした。
「我が名は草ヶ谷 透李!神の加護を持ちし者!この地を楽園至らしめんとして現れた者だ!」
「草ヶ谷 透李様。覚えておきます。ありがとうございました」
女性はそういうと上品にお辞儀し、立ち去った。透李が私の元に帰ってきたのと同時にチトセも帰ってきた。
「お待たせいたしました、緋女様。ではデートを続けましょう」
チトセがそう言って、私に右手を差し出して来たのでその手に左手をのせる。彼は優しく私の手を包み込むと歩き出す。普段は私の後ろに着いてくるだけの彼だが危ない事件があった時はこうして私の手を取って歩く。小さい頃、怖い見た目の人にぶつかったあとずっとチトセにくっついていたから、チトセもそれが癖になっているのだ。あの頃の私はお父様とお母様に蝶よ花よと可愛がられながら育てられた王女だったため怖がりだったのだ。
4人で歩きながらねるまにお菓子を買ってあげたり、チトセが帰りに買う食材を思案しているうちに市場を通り過ぎる。市場を抜ければここからはねるまと別行動だ。
「じゃあまた王宮で。いってきます!またねひめ!」
ねるまはそういうと私の返事も聞かず駆け出した。ねるまは自分の生まれ育った孤児院が大好きでシスターにもすごく懐いている。彼からしてみたら孤児院こそ自分の家のような感覚なのだろう。
「おい」
透李が私に声をかけた。ねるまの姿を見送って少しぼーっとしていたらしい。私ははっとするとチトセの手を握りなおしてまた歩き出した。