私がチトセにからかわれつつ歩いていると、老舗の酒屋が見えてくる。私がそこを通りかかると、中から私より子柄な女性ができきて

「緋女ちゃん、こんにちは〜」

と、私に声をかけてきた。

炎の国では、老若男女問わず大抵の人が私を【殿下】や【王子】、【緋女様】(たまに態度的に【姫様】だと思われる者もいる)と呼ぶが、彼女は私に萎縮した様子もなく私のことを【緋女ちゃん】と呼ぶ。

酒朱 明那(さけしゅ あきな)。彼女は海神王宮に海外からの酒をおろしている酒屋の跡取り娘だ。今日も看板娘として酒屋のエプロンをしている。

「明那さん、こんにちは。今日は店番ですか?」

私も明那さんは王宮の使用人では無いし大事なお取り引き先だから敬語で話す。明那さんは私が敬語で話すと少し困った顔をした後、直ぐに優しい笑顔に変わった。

「そうなの。でも、今日はこれからお友達に会うからそろそろ着替えようかなって。緋女ちゃんも今日はお出かけ?」

「はい、晴れだし少しお散歩です」

「そっか、気をつけてね」

「はい、明那さんも。ではまた」

「またねー」

明那さんとひとことふたこと交わしまた酒をおろすときに沢山お話しようと思い歩き出す。明那さんは美人だし、大人だし、お友達と言っていたけど彼氏とかかもしれないし。邪魔してはいけない。