私は昼までアロマを作ることにした。私はアロマテラピーアドバイザーの資格を持っているのだ。そろそろお母様のお誕生日だから今日はそれの練習だ。部屋に置くからアロマジェルがいいだろう。私は引き出しからジェルとラベンダー、オレンジスイートのアロマオイルを取り出して、睡眠導入に効果があるとされているジェルを作った。

完成したジェルをベッドのサイドテーブルに置いたところで、ドアがノックされた。

「入っていいぞ」

「失礼致します、緋女様」

入ってきたのはアーキビストのなんスーだ。
片手に資料を抱えて器用にドアを開けた。
彼は真っ赤な目を私に向ける。彼はハーフヴァンパイアで真っ赤な目をしている。普段は白い目なのだが仕事をしている時や、敵と応戦し愛用の二丁拳銃を構えている時は目を真っ赤に染める。一気に目が良くなるのだと言う。その目を活かし仕事をしてくれている。
ハーフヴァンパイアなのもあり38歳なのに見た目は16歳のそれだ。更に顔も海神王宮で一二を争う美形である。

彼は手に持っていた資料から1枚抜き取り私に向かって歩いてくる。すると彼の資料の山から1枚資料が落ち、彼は……それに滑ってコケた。

「……大丈夫か?」

「いってて……すみません緋女様」

差し出した私の手を取り立ち上がるなんスー。……彼はドジっ子だ。更に……

「何の用だった? 」

「緋女様に至急見てもらいたい資料が……あ!ぶちまけてしまった!」

「……ハンコもってるな、私の書斎によったのか」

「はい!」

「……ほかの資料を置いてこればよかったな?」

「……あぁっ」

壊滅的に要領が悪い。
しかしやっておいて欲しい仕事は期限までに終わらせるのがこの男だ。

なんスーはすぐに資料を集め、パラパラとめくり手を止める。

「これです緋女様。あ!」

流石の目の良さで見て欲しい資料を探し出し私に渡そうとしたなんスーが、何も無いところでコケる。そして、頭が私の胸に埋められた。

「も、申し訳ございません、緋女様!クビだけは、クビだけはご勘弁を!借金が後20万程度なのです!もう少しで返せるんです!見捨てないでください!」

なんスーが私から離れ腰を90度に曲げて謝ってきた。

彼に悪気は一切ないが彼は1日2回くらいはドジでラッキースケベをおこす。前は氷麗を押し倒して氷漬けにされていた。
更に相当なギャンブラーですぐに借金を作る。何度も返済しては生活費をギャンブルで溶かし借金を増やし、私にまた雇ってくれと言ってくるので最近正式に雇いだしたのだ。

私はため息を付き、彼から資料を受け取るとハンコを押した。

「ありがとうございます。緋女様!では失礼致します」

彼は元気よく返事をすると部屋を出ていく。タタタッと足早に歩く音が聞こえまたズシャアッとコケた音が聞こえたが放っておくことにした。

二丁拳銃を構え、敵を誰一人近寄らせず長距離から蹴散らす応戦モードとの違いに思わず笑った。