──五月七日。

世界を切り裂くような雨が、暗灰色の空からとめどなく降っていた。

もはや傘をさしても意味がない。地面に叩きつけられた水滴が跳ね返り、下半身はあっという間に濡れていく。

幸い今日は土曜だ。どうせ明日も休日なのだから、クリーニングに出してもらおう。

親に小言を言われそうだが、一喝されたらこの靄がかかっている頭も少しはクリアになるかもしれない。

とても現実とは思えない出来事が起きているというのに、浮かんでくるのはそんなことばかりだった。

どうにか慣れ親しんだ日常に留まりたい一心で、無理にどうでもいいことを考えようとしているのかもしれなかった。

こんなことが起きるなんて、想像できるはずがなかったのだから。

満開だったはずの桜は豪雨に襲われて瞬く間に散り、地面にじゅうたんを作っていた。

雨に濡れ、通行人に踏まれ、泥まみれになっていた。

いつもよりずっと、まるで枷でもついているかのように足取りが重く感じるのは、靴が水分を吸収しているからなのだろうか。

それとも、これから向かう先で見るだろう現実を、身体が拒絶しているのだろうか。

左右の足を交互に動かしているはずなのに、思うように進んでいかない。

まるで底なし沼に引きずられているみたいだった。