「へぇー!28歳なんですか?めっちゃ若く見えました!僕23なんで京花さんがお姉さんですね!」

そうニコニコしながら横でカクテルを飲む彼の横顔からは確かに年下の幼さを感じた。
あれからろくに考える暇も与えられず彼に引っ張って連れてこられたのはお洒落なバー。今は彼のおすすめのカクテルを2人して飲んでいる。ほんとは今頃家だったかもしれないと考えると早く帰りたいなんて頭に浮かんだりしたが、楽しそうに話しかけてくる彼と飲んでるうちになんとなくいい気分になってきて今はこうして私も楽しく会話している。

「じゃあ涼太君5歳年下かーいいなー若くって。こんなおばさんと飲んでて楽しい?笑」

「めちゃめちゃ楽しいですよ!それに京花さんは全然おばさんなんかじゃないです!」

そう力強く言うくれる姿がおもしろくて、

「いやー涼太君は優しいね笑。お世辞でもそう言う子は社会でやってけるよ。さすが若者のコミュ力は違うな〜。」

そう笑いながら言うと、彼はちょっと拗ねた様子で、

「京花さんと僕じゃそんな歳変わらないですよ!第一お世辞なんかじゃなくて本気で京花さんは綺麗です!」

少し唇を尖らせながらぶつぶつ言う彼が可愛く思えて年上の余裕か、それかだいぶ酔いが回ってきたせいか、

「あはは//笑。綺麗なんて久しぶりに言われたから嬉しいなー笑。ありがと。」

そう子どもにするように彼の髪をくしゃっと撫でると、その手をパシッと彼が掴んで真っ直ぐにこっちを見てきた。

「僕、ほんとに本気で言ってます。」

そうストレートに真面目な雰囲気で言って、私の手をそっと離した。彼の急な低めの声でさっきとはだいぶ変わった空気に私はどうしていいかわからず、動揺を隠すためカクテルをゴクッと飲み干した。

「すいません。もう一杯強いやつで。」

私がバーテンにそう呼びかけると、私たちは少し気まずくなって沈黙した。だけれど数秒するとまた彼は元の笑顔に戻って、

「京花さんどこで働いてるんですか?」

と普通に質問を投げかけてきた。

「あぁ、〇〇社だよ。あそこの開発部なの。」

追加で渡された先程より強めのお酒を飲みながら答えると、

「えっ!?すごいじゃないですか!!あそこめっちゃ有名なとこですよね!それも開発部ってなんか京花さん優秀ですね。」

そうすごく感心してくれているように褒めてくれたからさっきの空気はすぐにどこかに行ったみたいにまた嬉しくなって、

「まぁこれでも仕事一筋で頑張ったからね笑こんな私でも一応マネジャーやってるんだから!」

と自慢気に言うと、さらに目を輝かせた彼は、

「うゎっ、すご。やっぱ京花さん最強ですね!でも仕事一筋ってことは彼氏はいないんですか?」

そう少し期待しているような目を向けて聞いてくる。痛いとこ突いてくるなと思いながらも、

「ふんっ彼氏なんてもう2年もいませんよっ。
枯れてるなんて言わないでよ?」

とまだ飲みはじめたばかりのお酒を一気に飲み干しながら強がってる風に言い返す。すると彼は心なしかさっきより嬉しそうに、

「じゃあ今はフリーですよねっ!良かった、なんか彼氏いそうだったから。」

と言ってくるので、もうなんだかふわふわしてテンションが上がった私はムキになって、

「悪かったですねぇ〜!もうすぐアラサーですよ〜ってか、もうアラサーですよ〜だっ!」

といいぐっと立ち上がると、

「きゃっ!」

「うぉっと!」

だいぶ酔っているせいか足元がふらついて咄嗟に彼が座っている方に倒れ込んだ。そんな私をさっと支えて、

「大丈夫ですか?飲み過ぎですよ。」

そう顔を覗き込んで心配してくる。その顔が
なんだかかっこよくというか愛しく?思えて、普段の私ならあり得ないがアルコールの力のせいか彼の頬を撫でながら、

「なんか、涼太君かっこいいね。」

気づけばそんな言葉を発していた。彼はというと、

「えっ!////」

と顔を真っ赤にして固まってしまった。少しすると無言で財布からお金を出して会計し、私のバックを持って立ち上がった。

「行きましょ、京花さん。」

また真剣な雰囲気でそう私を支えながら言う彼に、私のもう正常に回っていない頭は、

「行こ〜〜ぅ笑」

と彼に身を任せ右手をグーにして突き上げアンパンマンポーズをとった。そんな私を見てクスッと笑った彼はそのまま私の肩を持って歩き始めた。