あれから私は特に彼と話す機会もなく適当にお酒を飲んだり、周りの人と軽く会話したりしていた。たまーになぜか彼から視線のようなものを感じた気がしたけどあえて気にすることもせずまあまあこの場を楽しんだ。
ふと時計を見ると21時を指している。30分飲んで帰るつもりががっつり1時間居座っていたようだ。そろそろ解散しそうだけれど、解散したら今度は夏希に二次会に引っ張って行かれそうなのでこの辺で退出しようとバックを持って立ち上がる。

「すいません!私ちょっとこれから用事できちゃって帰ります!ご馳走様でした」

男「えー京花ちゃん帰っちゃうの?なら俺近くまで送ってこうか?」

「いえいえっ!1人で帰れるんで!みなさんは楽しんで下さい!」

遠くの席に移動していた夏希にまた連絡すると口パクしみんなに一礼してさっと店を後にした。

「あーー疲れた。早く帰りたい。」

思ったよりは楽しかったがそれでも大人数はやっぱり疲れるようでふかふかのベットにダイブすることだけが頭に浮かんで駅までの足取りが速くなる。数分歩いていると、

「あのっ!!ちょっと待って!!」

なんか後ろから大きな声で呼ばれた気がして振り返るとあの彼が走って追いかけてくるのが見えた。

「あのっ!はぁっ、歩くの、速いですね。」

そう言って彼は私の目の前で止まって息を整えている。

「えっ?えっと、りょうたさん?ですよね?どうかしましたか?」

なんで彼がここに?そんな疑問しか私の中には浮かばず、まだ息切れしてる彼の顔を見て質問した。

「あっ//いやあの、えっと…あっ僕も抜けてきたんです!」

そう言って彼は手に持っているバックをヒョイっと顔の横に持ち上げてニコッと笑った。

「えっ?抜けちゃって良かったんですか?あ、もしかして涼太さんも用事があるとか?」

「あ、いや……あの実は京花さんを追いかけてきました//」

照れながらいう彼は頭をかきながら私から目線を外してオロオロしてる。
えっ?どゆこと?私追いかけてきた?なんで?彼の行動の真意が全くわからず何を言えればいいか口を閉ざしていると、

「あっ//あの僕連絡先、京花さんの連絡先知りたくって//ダメですか?」

今度はしっかり私の目を見て聞いてくる彼はまるで飼い主の反応を伺う子犬みたいでこの状況で可愛いな、なんて思ってしまう。

「あ私の番号?えっと、、いいですけど。」

そう私が返事するとくりくりの目をキラッキラっさせて、

「ほんとですかっ!!欲しいです!」

勢いよくそう答えた彼はポケットからスマホを取り出して私に番号を打つよう差し出してくる。今時LINEじゃなくて電話番号なのね。そう思いながらもスマホを受け取って自分の番号を打ち込んで彼に返すと、

「ありがとうございます!またすぐ連絡します!」

ってめっちゃ嬉しそうに言うからなぜかこっちも笑えてきて

「そんな喜んでくれるなんて思わなかったです。なんかこちらこそありがとうございます笑」

と笑いかけると彼は少し頬を赤くして

「あのよかったら用事の場所まで一緒に行ってもいいですか?まだ話していたくて…」

さっきよりちょっと控えめになりながらもそう聞いてきた。
まずい、そもそも用事なんて無かったし、どこに行けばいいんだ?駅まで行ったら不審がられそうな気もするけど、適当なとこ行って遠回りして帰るのも面倒だし。正直に白状した方がまし?ぐるぐる色々考えた結果、

「すみません!実は嘘なんです、さっき用事があるって言ったの。帰りたくなっちゃって。」

そう小さめの声で言うと

「あっそうなんですね!いや確かに結構疲れますよね笑あーじゃあこれからもう帰りますか?」

意外に嘘ついてた事には反応なしにそう聞き返してきたので、

「帰るつもりでいました笑。だから駅まで一緒にどうですか?」

なんて珍しく自分から一緒に帰る提案をしてみると、彼は何も言わずに少し考えた後、

「じゃあ、僕と2人で飲み直しませんか?」