離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

 先ほどまでの笑顔が消え、目に見えてシュンとした様子の的場に戸惑っていると地を這うような低い声が聞こえた。

「おい」

 声の方向を見ると泰雅が立っていた。まだ約束の時間には少しあったが、迎えに来てくれたようだ。

「泰雅さん」

「純玲、迷わなかったか?」
 純玲には優しい声を掛けてくれるが、視線はなぜか的場を睨んだままだ。

「大丈夫です。ここまで的場さんに案内いただいたので」

「的場先生、ありがとう」

「わぁ、全然感謝してない言い方」
 泰雅の心のこもっていない声色に的場は大げさに肩を竦める。

「すまない。弁護士が人妻を白昼堂々とナンパしているようにみえてしまったから」

「バレました? いやぁエレベーターで一緒になった時から雰囲気があって綺麗な人だなって思ってたらこの階で降りたから、これはチャンスだ!って声かけちゃいました」

「指輪は見えなかったのかな? 的場先生」
 泰雅の声はより低くなる。
 
 気づきませんでした、すみませんと頭を掻きながら素直に謝る的場は大柄な体形に見合わずかわいく思えてしまう。
 冗談を言い合うほどこのふたりは仲がいいらしい。そう思って微笑ましく見ていると的場が純玲に向き直る。