離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

 失礼、と泰雅はスーツの内ポケットからスマートフォンを取り出す。
 
 表示された名前を見て、社長の許可を得るのも忘れ通話ボタンをタップする。

「純玲? どうした?」

『泰雅さん? お仕事中ごめんね。陣痛が始まったっぽいから、今からお母さんと病院に行くね』

(いよいよか……!)

 スマートフォンを握る手に思わず力が入る。

「――そうか。俺もすぐ病院に向かうよ」

 泰雅は敢えて落ち着いた声を出した。

『うん。でも急がなくていいからね、慌てて事故起こしたら大変だから』

 純玲の声にはまだ余裕がある。まだ陣痛は辛くないのだろう。
 しかしこんな時もこちらのことを気に掛けるのは彼女らしい。

「わかった。君こそ気を付けて」

 通話を終了させると、雄一郎と神崎の視線が思いきりこちらに向いていた。

「陣痛が始まったそうです」

 そう告げながら、泰雅は逸る気持ちで一度自宅に戻って車で行くのがいいのか、ここで降ろしてもらいタクシーか地下鉄に乗る方が早いかと考え始めた。

 すると社長が低い声で言う。

「病院はどこだ。実家の近くなのか」

「はい。実家からは歩ける距離です。さすがに義父に車で送って貰うと思いますが」