離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

 社長専属の運転手がいるものの、都内の移動は神崎に運転させることが多いという。
 高級車の広い後部座席に腰掛けつつ、泰雅は隣の百田雄一郎の様子をちらりと伺う。

 巨大財閥百田グループの権力を一手に掌握し、牽引する男。
 “百田の獅子”と呼ばれる孤高の存在。本来ならこうして同じ車の隣に座り、話しかける事などできない人物だ。

(純玲に似ている所は全くないんだよな。良かったと言うべきか)

 外見もそうだが、彼女の優しい性格や、奥ゆかしくて恥ずかしがり屋のところも到底共通点は見つからない。

 雄一郎はとても寡黙だ。必要以上のことはしゃべらない。
 今もこちらの不躾な視線に気づいているだろうに、そ知らぬ顔で目を閉じている。

「……先日、奥様にお会いしました」

 ご存じかと思いますが、と泰雅は話し出す。

 雄一郎には政略結婚した妻がいる。だが、結婚したのは純玲の実母の死と純玲の存在を知った数年後だ。

 雄一郎が自ら選んだのは、母親や周囲の勧める相手ではなく大手化学メーカーの令嬢だった。
 夫人との間には現在大学生と高校生の息子が2人いる。純玲にとっては異母弟になる。