うとうとしたまま、純玲は思考を漂わせる。
 
 明日から仕事の泰雅は日中家を外さざるを得なくなるため、実家で産気づくのを待つことになっている。
 明日の朝、泰雅が車で送ってくれる予定だ。

 ふと、胸から下にふわりとした感覚がした。
 いつのまにかリビングに戻っていた泰雅がタオルケットを掛けてくれたようだ。

 髪の毛がゆっくり撫でられた。少し驚いたが彼の指先の心地よさに目を開けずにいると、少し硬い彼の唇が額に押し当てられる感覚がした。

(……え?)

 泰雅はソファーの横に座ってさらに頬に唇を当ててきた。
 その唇が純玲の唇に触れようとした瞬間――

「泰雅さん?」

 純玲は目をあけると、至近距離に端整な夫の顔があった。

「目を覚ましたの初めてだ。やっぱりお腹が大きくて眠りが浅くなっているのかな」

 少し驚いた顔で独り言のようにいっているが……”初めて”ということは、前からこの所業を?

「ちょっと待って……まさか、いつも、こうしてたんじゃないわよね?」

 元々一度寝たらなかなか目が覚めない純玲だ。
 これまでも間抜けな寝顔を見られて、好き勝手されていたのではないかと不安になってくる。