離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

 声を荒げた純玲の頬は濡れていた。
 いつのまにか涙を零していたのだ。彼の前ではもちろん物心ついてから人前で初めて流す涙だった。

「お願いだ、純玲。落ち着いてくれ……」

 泰雅は純玲を引き寄せ、抱き込んで懇願する。その腕はいつもの通り温かいのに。

(もう……どうしたらいいか、何を信じていいか、わからない……) 

「うっ……!」

「純玲?」

 とうとう吐き気が我慢できなくなった。純玲は口元を押さえて泰雅から慌てて距離をとると、トイレに駆け込む。
 きっと悪阻だ。今まで大丈夫だと思っていたのに。精神的にショックを受け、体調に現れたのだろうか。

「……はぁ……」

 吐いてしまうと大分スッキリし、同時に自分がだいぶ感情的になっていたことに気付く。
 とは言えまだ泰雅と冷静に向き合える状況になっているわけではなく、しばらくそのままトイレの中でじっとしていた。

 するとドアの外から遠慮がちに大丈夫かと声が掛けられ、純玲はゆっくりと廊下に出た。

「……吐いたら、随分楽になりました」 

「そうか」 

 安心したように息をついた泰雅は純玲に手を伸ばしかけたが、思い直したように降ろす。