純玲は一人マンションに戻り、そのままソファーに座りこんでいた。
すでに夜10時近いが、着替える気にもなれない。
ガラスのテーブルの上には肇に渡された写真とDNA鑑定の資料が入った茶封筒が投げ出されていた。
あの後、肇には瑠美とは別れるから泰雅と別れて結婚しないかと熱心に口説かれた気がするが、あまり覚えていない。
ふりきってその場を去った。
偶然純玲の出生を知った肇の目論見は、泰雅の浮気を純玲に告発し破局させた後、自分が後釜におさまることだったようだ。
しかし純玲自身が自分の生まれを知らなかったことに気付き、嬉々として真実を告げたのだ。
自分は本当の事を教えた恩人だと主張するかのように。
(社長が、私の父親? 社長は知っていて私を社長秘書にしたの? なんでお父さんもお母さんも教えてくれなかったの?)
さまざまな疑問が頭の中をぐるぐると回る。でも大部分を占めているのは夫のことだった。
(泰雅さんは麗先生と付き合っていたのに、自分の利益のため私と結婚したの?)
まだ泰雅は帰ってこない。タクシーに乗ったふたりは写真のマンション……麗の住む家にむかったのだろうか。



