曖昧に笑って肇も立ち上がった。彼の横に寄り添い瑠美が言う。
「弁護士の旦那様がいるのに、人の婚約者を誘惑しようとしてるなんて、いいご身分ですこと」
会話の内容は聞かれなかったようだが、話しているのを見て勝手に肇を誘惑したことにされてしまったらしい。
「誘惑なんてしてないわ。話しかけてきたのは佐久間さんの方よ」
「あら、言い訳するの? やっぱり純玲ちゃんは図々しいのね。本当の娘じゃないくせに小野寺家に入り込んで不幸を呼んだ“疫病神”だものね」
「瑠美ちゃん……」
彼女はなんでここまで自分に敵意を向けるのかとやるせなくなる。沢山の人の愛情を一身に受け、我儘が言える彼女のことを自分は眩しく思うくらいだったのに。
図々しい。疫病神――よく耳にしてきた言葉。
幼い頃はそれらが何を意味するのかよく分からなかった。
その意味を初めて知ったのはいつだっただろう。
自分が傷つくと両親が悲しむ。それが怖かった。
だから、心無い言葉を受け流すのが得意になり、そのまま大人になった――でも。
純玲は俯きがちだった顔を上げた。
「本当の娘じゃない疫病神は、幸せになったらいけないの?」
「……な、なによ! 何がいいたいのよ!」
「弁護士の旦那様がいるのに、人の婚約者を誘惑しようとしてるなんて、いいご身分ですこと」
会話の内容は聞かれなかったようだが、話しているのを見て勝手に肇を誘惑したことにされてしまったらしい。
「誘惑なんてしてないわ。話しかけてきたのは佐久間さんの方よ」
「あら、言い訳するの? やっぱり純玲ちゃんは図々しいのね。本当の娘じゃないくせに小野寺家に入り込んで不幸を呼んだ“疫病神”だものね」
「瑠美ちゃん……」
彼女はなんでここまで自分に敵意を向けるのかとやるせなくなる。沢山の人の愛情を一身に受け、我儘が言える彼女のことを自分は眩しく思うくらいだったのに。
図々しい。疫病神――よく耳にしてきた言葉。
幼い頃はそれらが何を意味するのかよく分からなかった。
その意味を初めて知ったのはいつだっただろう。
自分が傷つくと両親が悲しむ。それが怖かった。
だから、心無い言葉を受け流すのが得意になり、そのまま大人になった――でも。
純玲は俯きがちだった顔を上げた。
「本当の娘じゃない疫病神は、幸せになったらいけないの?」
「……な、なによ! 何がいいたいのよ!」



