離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

 父は話を続ける。最近経営に行き詰っているオノデラ貿易社内では、前社長の父にもう一度采配をとってもらいたいという声が上がっているらしい。
 それを脅威に思った叔父に父は戻るつもりはないと表明しろと言われているそうだ。

「頼まれたって戻るつもりはないのにね、雪乃さん」

「めんどくさいものねぇ」

 一応周囲を気にして小声だが父と母の顔は明るく、面白がる余裕すらある。
 色々あったかもしれないが、以前泰雅が言っていたように、両親は小野寺家を見限っており、わだかまりはどうでもいいものになっているのかもしれない。

(むしろいつまでも“小野寺”に拘っていたのは私だけだったのかもしれない)

 久々に長男夫妻、養子の純玲までも公の場に姿を見せているので、親戚や事情を知る人間はこちらを遠巻きにひそひそと話をしている。

 一方、社長である叔父や、叔母、娘の瑠美は沢山の人に囲まれて談笑している。
 瑠美の隣には肇の姿があった。泰雅は肇の姿を認めると、スッと無表情になり、彼らから距離取る。

「お義父さんが言うように、せっかくだから何か食べよう。もう体調はいいんだろう?」

「はい、今はもう大丈夫になりました」