泉が秘書として付いている役員は法務部担当なので、たまに泰雅と顔を合わせる機会があるという。
 純玲は今の所会ったことがないので少し羨ましい。

「そんなこといって、泉のタイプはかわいい男性でしょ」

「バレたか」

 泉はウフフと笑う。彼女のタイプは意外にもかわいいワンコ系男子なのだ。曰く、裏表がなく素直な人が好きらしい。

 私にも素敵な人にいきなりプロポーズされたいわぁと言いながら、泉はタルタルソースたっぷりの鶏肉にかぶりつく。
 純玲もそれにならって箸を伸ばした。

 デートの日、泰雅への想いを自覚した純玲は、彼が期限前に契約終了を言い出すことはないと言ってくれたのが嬉しかった。
 あと1年8カ月は彼に必要とされるのだ。その間は精一杯妻の役目をしようと以前にも増して家事に精を出している。

 毎日ではないが、彼が起きると同時に目を覚ますこともできるようになった。彼より先でないところが情けないけれど。

 そんな朝は、なぜか不満げな夫をジョギングに送り出し、その間に朝食を作ったり簡単に家事を済ませる。
 夕飯も栄養バランスのとれたものを心掛けている。

(でも最近の泰雅さんは忙し過ぎるんだよね)