ガラス越しに桜の木を眺めながら、ぼーっと過ごすことが芽依にとっての至福の時間である。
 疲れたり、気分を変えたい時などには平日、休日を問わず、ついつい通ってしまう。
 
 桜が咲いていない時期でも、風に揺れる緑と木漏れ日を見ているだけで、気持ちが優しくなる。

 この桜は遅咲きの品種なのだろう。
四月に入ったが、まだ少ししか咲いていない。それでも時折、淡いピンクの花びらが風に舞う。
 
(日本の自然は綺麗だなぁ……)
 
 優美(ゆうび)なダンスを身に付けようとしているのに、自分は美しさから、どんどん遠ざかっているように感じてしまう。