「三人で手分けをしてトリアージをしましょう!」

一花はそう真剣な表情で言った後、怪我人の元へと駆け寄る。そして、声をかけながら怪我の状態を見始めた。ヨハンも、そして桜士も、怪我人に駆け寄る。

「大丈夫ですか?どこが痛みますか?」

桜士は、足を怪我している若い女性に話しかける。女性は痛みに顔を顰め、「足と体全体」と答える。受け答えもでき、周りの人よりも傷はそれほど酷くはない。桜士は女性の手首に黄色の部分を切り取ったトリアージ・タッグをつけ、他の人の元へ向かう。

トリアージとは、このような事故現場で多くの負傷者が出た場合、重症度や治療緊急度に応じた「傷病者の振り分け」をすることである。このような現場では、医療スタッフや医療資源が限られてしまう。そのため、優先順位をつける必要があるのだ。

一般的には、優先順位は赤、黄色、緑、黒の四色で表される。赤は重症度が一番高く、生命を救うため直ちに処置を開始しなくてはならない。黄色は重症度は中間であり、多少治療に遅れがあっても生命に危険のない人を指す。緑は重症度は低く、軽傷で専門医の治療を必要としない人を指す。そして黒はすでに死亡、または処置を行っても救命が不可能な人を指す。