ベテラン教師の話が終了して、3限目と4限目の間の休み時間になった。

私の席の周りには、3人のクラスメイトが集まってきた。

『やっぱ2学期といえばイベント!楽しみだよね!サイコーだよね!』

『めっちゃわかるぅ。』

『まず、体育祭マジックで彼氏ができるでしょ。次に文化祭マジックでも彼氏ができて、修学旅行でふたりきりマジックでも彼氏ができるよね!学園マジカルパラダイス!』

マジックを連呼して、誰よりも盛り上がっているのは、ヤヨイちゃんってコだ。

絶対、勉強のことなんて頭にない。

どうでも良いことなんだけど、友達から聞いた話で、ひとつ思い出したことがある。

ヤヨイちゃんって、同じクラスの男子生徒達の間で行われた《第1回 黙っていればかわいいのに…(泣)ランキング》において見事?、1位を獲得したらしい。

クラスの男子達って、結構失礼なランキングをつけたがるから、あまり好きじゃない。

いや、女子達も失礼なランキングを作るコは普通にいるから一緒か。

勝手にランキングをつけるなんて、性別関係なく、私は反対だ。

でも、ヤヨイちゃんのランキングだけは強く共感してしまった。

後、ちょっと笑ってしまった。

本当にごめんね。

『めっちゃわかるぅ。』

先程からずっと激しく同意をしているコは、ミカちゃんだ。

基本的にミカちゃんは同意しかしない。

話に乗っかっている所以外、見たことがない。

ちなみにミカちゃんは学校内で出回る情報に詳しい。

私が知っている噂話の8割はミカちゃんから聞いた話だ。

『イベントいっぱいで楽しみなのは分かりますけど、2学期はテストもいっぱいありますよ?』

休み時間の楽しい雑談に水を差すように、私はテストの話を切り出した。

テストと聞いたヤヨイちゃんは青ざめてしまった。

『ねぇ、コトノちゃん!なんてこと言うの!恐ろしいこと言わないで!blueberryな思い出を作れるの、今だけなんだよ?』

『な、なんかごめんね。』

ヤヨイちゃんの取り乱した様子を見て、思わず謝ってしまった。

勉強のことはできる限り逃避したいんだろうな。

『恐ろしい…。あ、ユイちゃんも行事とか楽しみだよね?』

『うん、そうね。』

ヤヨイちゃんから急に話を振られた彼女はユイさん。

ミステリアスな雰囲気の人で、私たち4人グループの中では、唯一の彼氏持ちだ。

私は勉強一筋だから、関係無いけどね。

『ユイは彼氏がいるからさぁ。イベントが倍くらい楽しいじゃん。いーなー。』

『そうかもね。』

ミカちゃんの冷やかしに対して、ユイさんは苦笑いで返した。

恋人がいる人の余裕なのか、それとも…。

ちなみにユイさんは、各クラスの男子生徒達の間で頻繁に行われている《かわいい娘ランキング》や《美人ランキング》等々において、必ず名前が挙がるらしい。

ちゃんと確認した訳じゃないけど、噂ではそう聞いている。

要するに、大半の男子はユイさんの見た目が好きだってことだ。

実際、本当に整った顔をしている。

お人形さんみたいだな、綺麗だなって、ユイさんを見る度に思っている。

『ってかさ。コトノって恋愛なんか興味無い感じ出してるけど、あたし知ってるんだよ。ほら、あの生徒会のイケメンとさ…。』

『違います!違いますよぉ!』

咄嗟に大きな声を出してしまった。

私は慌ててミカちゃんの言葉を途中で遮った。

だって、変な誤解されたくないから。

幸い、教室内は騒がしいおかげで誰も気にとめていない。

『ちょっと!ミカちゃんまだ途中だし!それで?それで?何かあったの?』

興味津々なヤヨイちゃんに対して笑いかけたミカちゃんは、話を続けた。

『この前さ、コトノって風邪で休んでたじゃん?その時に生徒会のイケメンがコトノのノートを全部さ…。』

キーンコーン、カーンコーン。

最高のタイミングで、休み時間の終了と授業開始を知らせるチャイムが鳴った。

またしてもミカちゃんの話は遮られてしまったけど、私としては助かった。

『とにかく!私は勉強一筋なんです!席もどって!』

『へーい。』

『ちょっと!ミカちゃん、絶対あとで聞かせてよね!』

『ふふっ。』

みんなそれぞれそう言い残し、自分の席に戻った。