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ーーーそういえば、お見舞いってなにか持っていった方がいいのだろうか。
そう思いついたのは、すでにあの少女の病院に着いてからだった。今日は三年生のテストだか何だかで、運良く午前授業だったので早速あの少女の元へ行こうと思い学校が終わった足でそのまま病院へ来ていた。
手ぶらで行くのは気が引けたが、今更花屋に買いに戻るほどでもないかと諦め204号室へ向かった。
204号室の扉の横には、『白波小雪 坂口優斗』と書かれていた。どうやら相部屋のようだ。僕はひとつ深呼吸をしてからゆっくりと扉を開いた。
その部屋に、あの少女はいた。二つあるうちの右側のベットで退屈そうに窓の外に目を向けている。
「あの…」
そっと声をかけると、その少女は弾かれたように僕の方を振り向いて大きな目をさらに大きく見開いた。
「あ…えっと…また来ました」
なんて言ったらいいか分からず絞り出すように声を出すと、しばらく固まっていた少女はふわりと嬉しそうに微笑み、自分の方へ来るように手招きしてくれた。
手招かれるままに僕も少女の方へと歩いていく。
「君、また来てくれたんだね。嬉しい」
本当に嬉しそうにそんな事を言ってもらえて思わず照れてしまい、目をそらす。
「うん、そういえば名前、小雪っていうんだね」
「あぁ、うん。冬に産まれたから小雪なんだって。安直だけど結構気に入ってるんだ」
そう言って小雪という可愛らしい名前にピッタリな可愛らしい顔でにっこりと笑う。
「君の名前は?なんていうの?」
彼女は興味津々で僕の名前を聞いてきた。
「俺は音羽伊澄。なんでこの名前にしたのかは聞いたこと無かったなぁ」
「へぇ、伊澄か。いい名前だね」
彼女にそう言われ初めて自分の名前を意識する。そこまで名前に興味はなかったけれど、彼女にいい名前だと言われるならこの名前で良かったと思った。
「そういえば小雪…さんは今いくつなの?」
先程からの挙動的に恐らく年下だろうなと思いながらそうたずねる。
「15だよ。だからえっと…高一かな。それと、小雪でいいよ。君は?中学生?」
同い年であることに驚きながら、当然のように僕を年下だと思っている彼女にムッとして答える。
「俺も15だよ。高校一年。同い年なんだね。」
そう答えると、今度は彼女の方が驚いたように目を見開いた。
「えぇー私の方がお姉さんだと思ってた!」
「こっちこそ俺の方が年上だと思ってたよ」
しばらくどっちの方が歳上に見えるかで言い争っていたら、慌ただしい足音が近づいてきて勢いよく病室の扉が開かれた。
ーーーそういえば、お見舞いってなにか持っていった方がいいのだろうか。
そう思いついたのは、すでにあの少女の病院に着いてからだった。今日は三年生のテストだか何だかで、運良く午前授業だったので早速あの少女の元へ行こうと思い学校が終わった足でそのまま病院へ来ていた。
手ぶらで行くのは気が引けたが、今更花屋に買いに戻るほどでもないかと諦め204号室へ向かった。
204号室の扉の横には、『白波小雪 坂口優斗』と書かれていた。どうやら相部屋のようだ。僕はひとつ深呼吸をしてからゆっくりと扉を開いた。
その部屋に、あの少女はいた。二つあるうちの右側のベットで退屈そうに窓の外に目を向けている。
「あの…」
そっと声をかけると、その少女は弾かれたように僕の方を振り向いて大きな目をさらに大きく見開いた。
「あ…えっと…また来ました」
なんて言ったらいいか分からず絞り出すように声を出すと、しばらく固まっていた少女はふわりと嬉しそうに微笑み、自分の方へ来るように手招きしてくれた。
手招かれるままに僕も少女の方へと歩いていく。
「君、また来てくれたんだね。嬉しい」
本当に嬉しそうにそんな事を言ってもらえて思わず照れてしまい、目をそらす。
「うん、そういえば名前、小雪っていうんだね」
「あぁ、うん。冬に産まれたから小雪なんだって。安直だけど結構気に入ってるんだ」
そう言って小雪という可愛らしい名前にピッタリな可愛らしい顔でにっこりと笑う。
「君の名前は?なんていうの?」
彼女は興味津々で僕の名前を聞いてきた。
「俺は音羽伊澄。なんでこの名前にしたのかは聞いたこと無かったなぁ」
「へぇ、伊澄か。いい名前だね」
彼女にそう言われ初めて自分の名前を意識する。そこまで名前に興味はなかったけれど、彼女にいい名前だと言われるならこの名前で良かったと思った。
「そういえば小雪…さんは今いくつなの?」
先程からの挙動的に恐らく年下だろうなと思いながらそうたずねる。
「15だよ。だからえっと…高一かな。それと、小雪でいいよ。君は?中学生?」
同い年であることに驚きながら、当然のように僕を年下だと思っている彼女にムッとして答える。
「俺も15だよ。高校一年。同い年なんだね。」
そう答えると、今度は彼女の方が驚いたように目を見開いた。
「えぇー私の方がお姉さんだと思ってた!」
「こっちこそ俺の方が年上だと思ってたよ」
しばらくどっちの方が歳上に見えるかで言い争っていたら、慌ただしい足音が近づいてきて勢いよく病室の扉が開かれた。

