君と生きる冬



「おねーちゃーん!」

大きな声が聞こえたと思うと、病室のドアが勢いよく開かれ、弟の想太がランドセルを背負ったまま走ってきた。

「こら想太、病院で大きな声出しちゃだめでしょ」
「ごめんなさーい!」

言ったそばから大きな声で返事が返ってきて、思わず苦笑する。毎回同じことを言っても元気よく入ってくる弟には最早注意する意味は無いのかもしれない。

「おねーちゃん元気?」
「うん、元気だよ。ありがとう」

想太は毎日病院へ来てはそう聞いてから話し出す。今日も「そっか!よかったね!」と笑顔で返してくれた。

「あのねおねーちゃん、今日ね、学校でねっーー」

想太は今年小学生になってから、毎日病室へ来ては学校での出来事をたくさん話してくれるようになった。小さい頃から入院が多く、学校に行くことはほとんどなかった私は想太の話を毎日楽しみにしている。

「…?」

しばらくの間ずっと話していた想太が急に首を傾げて聞いてきた。

「お姉ちゃん、なんかいいことあった?」
「へ?なんで?」

唐突な質問に思わず変な声を上げてしまう。

「んーなんかいつもよりにこにこしてる!」

そう言われてはじめて自覚する。いいこと…か。頭の中に昼間に話しかけてくれた男の子の顔が思い浮かぶ。

「うん、いい事あったかも」
「ほんと?良かった!」

想太はにぱっと笑ってまた話し続ける。その顔を見ながら、「想太、お姉ちゃんお友達出来ちゃったかも」なんて、心の中で呼びかけてみる。
自分でも気づかないうちに、想太以外の子がお見舞いに来てくれる事に少し浮かれていたのかもしれない。

まだまだ話し足りなさそうな顔でどんどん話を広げていく想太を見て、思わず頬が緩む。

ーーー明日、あの人も来てくれるといいな。