「わっ桜だ!」

隣から弾んだ妹の声が聞こえてきて空を見上げる。妹の言う通り、道路の傍に桜が咲いていた。

「わぁ!桜咲くの遅かったね!」
「もう4月も終わりごろだもんね」

はしゃぎ出す妹が転ばないように手を引っ張りながらそんな事を口にする。

「お父さんとも後で見よ!」

妹にそう言われ、なぜこんな夜に外に出たのかを思い出す。父が胃潰瘍になり一週間ほど入院したのだ。そして今日退院できるため、妹の夏葵と迎えに来たのだ。

「そうだね。あんまり無理しすぎないように言わないと」

そう言うと夏葵も大きく頷いて、病院へと足を早めた。